「小さな虫はとんでもなく機能的でかっこいい」電子顕微鏡技士が驚いた 美しすぎる昆虫たちのミクロの姿


「虫を見たらすぐつぶしちゃう人って多いですよね。でも、そのつぶされる虫自体はとんでもなく機能的で美しいんです」

テラウチウンカ

 部屋の中に小さな虫が飛んでいる。いやだな、と思いパチンと手で叩き潰す。誰にでもある日常的な動作であろう。その虫が一体どんな虫なのか、ほとんどの人は考えたこともないのではないか。

 電子顕微鏡一級技士の渡邊孝平さんの仕事は、電子顕微鏡を使い病気の患者さんの細胞を撮影することだ。その電子顕微鏡を見る技術を使い、肉眼ではほんの小さな点にしか見えないような、わずか数ミリサイズのミクロの虫たちを拡大し、写真に収めてきた。その初めての書籍が「電子顕微鏡で見る昆虫・奇蟲図鑑」(グラフィック社)である。

渡邊孝平「電子顕微鏡で見る昆虫・奇蟲図鑑」(グラフィック社)

小さな虫に大きな魅力が隠れていることを、ほかの人にも見てもらいたい

 「普段の仕事では、細胞の向こうに一人の患者さんがいる。その方の病気の治療のために一生懸命撮影しています。虫を撮影するのはただ単に私自身が楽しくて、もっと見たい、電子顕微鏡でなければ見えない拡大サイズで、小さな虫にこんな大きな魅力が隠れているんだってことを、ほかの人にも見てほしいという気持ちです」

ハンミョウ

 人の目の数百万倍の倍率を持つ電子顕微鏡で見る、小さな虫たちの姿。例えば口、爪といった一部分の拡大写真は、一見虫とはわからず、古代の海洋生物や植物のようにも見える。

キマダラセセリ

 「虫の体の構造は大きな虫でも小さな虫でも、基本的な構造はそれほど変わりません。でも大きな虫なら肉眼でわかるその構造が、小さな虫は気づいてもらえない。電子顕微鏡で見ると、頭の形、節の構造、そうした細部の美しさや機能性が一目瞭然でわかるんです。小さいものに隠れたダイナミズム、それを電子顕微鏡で引き出していく。多くの人が一瞬でつぶしてしまう虫に、こんなカッコいいディテールが隠れていたんだと」

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