『宝石の国』『二匹目の金魚』『緑の歌』……部屋におきたい、装丁にこだわりを感じる漫画たち

『緑の歌』

 2022年5月に上下巻が発売され、小説家の村上春樹氏や作詞家の松本隆氏がコメントを寄せた『緑の歌』。本作も装丁を作者本人が手掛けている作品だ。

 台湾の台北で暮らす少女・緑が多くの楽曲や小説、映画、そしてひとりの少年と出会うなかで、さまざまな世界に触れていく。楽曲『風をあつめて』や小説『ノルウェイの森』など、日本で暮らすわたしたちにとってなじみ深いであろう作品が登場する。

 そんな本作のカバーや帯に描かれているのは、作中で描かれるエピソードに関連したイラストの数々である。

 各エピソードの副題が描かれたCD風のイラストは作中で登場するCDの数々を、飛行機の搭乗券風のイラストは東京行きの飛行機に乗るミドリの様子を想起させる。ライブチケットを彷彿とさせるイラストからはふたりでコンサートへ訪れた日を思い出すことができるだろう。

 ちなみに、『緑の歌』の作者・高妍氏はコミックスの発売について、自身のSNSにてコメントを投稿した。

装丁というお仕事は、読者がどのようにこの本をめくるか、
どのようにこの本に入り込むかを想像しながら、
物語に一番合うデザインをしたり、用紙を選んだり、
本好きからすればとても素敵なお仕事だ。
この機会を得て、とても嬉しく光栄だが、
一方で少し不安もあった。
それでも喜びや「やりたい」という意欲が、その不安を大きく飛び越した。初めての漫画単行本で、自身で装丁もやらせていただくことになり、そして疲れをも忘れるほど、制作に夢中になってしまったのだ。
ーー高妍氏のフェイスブックより
(https://www.facebook.com/gaoyann/posts/529826348709635)

 高妍氏の投稿したコメントは、本稿で紹介した作者が装丁を担当した心情と通じるものがあるのかもしれない。自分の作品が紙の本になる喜び。それは漫画を創作する人、漫画が好きな人にとって大きなものであろう。その喜びも紙の本が存在し続ける理由のひとつにあるはずだ。

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