『ちはやふる』戦っているのはひとりじゃない クライマックス目前の第49巻 胸熱の展開とは
いよいよ、クライマックスが目の前だ。
末次由紀による『ちはやふる』。競技かるたをテーマに、主人公の綾瀬千早が仲間と共にクイーンを目指す道を描く。
小学6年生のときに福井からの転校生・綿谷新に出会ったことで競技かるたの魅力を知った千早と同級生の真島太一。高校生になり再会した3人は切磋琢磨しながら、それぞれクイーン、名人を目指す。
2008年にスタートした連載が2022年8月1日に発売される掲載誌「BE・LOVE」で最終回を迎える。最終回を控え、発売された『ちはやふる』49巻の見どころを紹介する。
それぞれが原点に立ち返る
名人・クイーン戦第5試合を描く49巻。先に3勝したほうが王者というルールで、5試合目にもつれこむということは、全員が2勝2敗。この試合に勝った者が王者。緊迫する空気、身体的にも精神的にもギリギリの中で自然と自身のこれまでを振り返っている。
かるたが全てで、かるたの“札”が友達のクイーンの若宮詩暢。天性の「感じの良さ」を持ちながらも問題児と揶揄される名人の周防久志。無敵に近い強さを誇っていた二人が、挑戦者である千早と新に追い込まれていき、自分とかるたの関係について見直していく。
ずっとひとりだと思っていた。かるたでしか認められるところがなかった。かるたを愛しすぎている詩暢と、かるたが好きなのに好きだと認められない周防。そんな2人が戦いの中で見つける答えに、胸が熱くなる。
1巻の伏線を49巻で回収
『ちはやふる』の1巻、1ページ目は千早がクイーン戦に挑んでいるシーンから始まる。
そして、一言めのセリフは
「お願い だれも息をしないで」
49巻の帯にもなっているセリフで、作中で千早と詩暢が向かい合っているシーンの言葉である。つながった、というより、1巻から繋いでいた線が結ばれて、円になったような気持ちになる。
そしてもうひとつ。1巻で千早、新、太一の恩師である原田が言ったセリフ。
「どんなに強くても かるたが好きでも 友達がいないと続けられないんだ」
同じ会場で行われる名人・クイーン戦。信頼関係で結ばれている千早と新が同じ畳の上で戦っていることは2人にとって大きな意味を持つ。そして、その2人を太一が見守る。
そんな中で、詩暢は自分がずっとひとりだったことに気がつき、同時に今は「千早がいる」ということにも気づかされる。
「示そう 二人で 一人より友達と一緒に頑張ったほうが強くなるって」
1巻を読んだ後に49巻を再読すると違う趣が出てくる。ここに向かって走ってきたのだなあ、ということが実感できる。
努力は報われるのか
『ちはやふる』には天才も出てくる。才能ある人間が多くいる。千早や周防などは耳が良いので、かるたをする上ではとても有利だ。しかし、それだけでは強くなれない。頂点に立つことはできない。それぞれが努力を続け、頂きに手を伸ばす。そして、頂きにたどり着いたあとも、努力を重ねなければあっという間に転げ落ちていく。強い人は、常に戦いと努力を続けなければならないのだと分かるし、続けなければ強くもなれないのだ。
激戦の末、名人、クイーンの座に就くのは誰なのか。
最終巻、第50巻は今年の冬に発売予定だ。