時代劇漫画をわかりやすく描くポイントはーー元連載作家が添削動画で語った「背景」の重要性

 時代劇・歴史ファンタジーは、漫画においても根強い人気を誇るジャンルだ。『鬼滅の刃』の大ヒットもあり、そうした作風にトライしている漫画家の卵も少なくないだろう。

 そんな中で、時代劇漫画を上手に描く方法をわかりやすく解説する動画が、YouTubeにて公開された。アップしたのは、元週刊少年漫画誌の連載作家・ペガサスハイド氏。ハイド氏は視聴者から寄せられた一見上手な漫画やイラストを、プロの目線で細かく添削している。解説のわかりやすさとともに、あくまで本人の長所を生かすアドバイスが心地よく、自分では絵を描かない人も楽しく視聴できる。チャンネル登録者数は15万人を超える。

 4月25日に公開された動画では、有馬りまさんの作品を添削することに。イラストレーター志望とのことだが、“マンガも描けるようになりたい”とのことで応募したそう。描かれたマンガの舞台は大正2年。街の人が“人斬り”の恐怖に怯えている様子が、1ページの原稿から伝わってくる。

【漫画添削50】時代劇漫画をわかりやすく描く方法 〜プロ漫画家が教えます〜

 この原稿を受け、ハイド氏は「有馬りまさんはあまりマンガを描いたことがないようですが、そのわりに上手いです。誰がどこで何を喋っているかがしっかりとわかるし、雰囲気作りも良いと思います」と評価した。

 その上で始まった添削作業。まずハイド氏は「画力が足りない。有馬りまさんはイラストレーター志望だそうですが、だったらなおさら絵には力を入れてほしいですね」と指摘。「主要キャラクターの頭身」や「多すぎる脇役の会話」などの課題を挙げながら、「時代設定が街の様子、暮らしている人々の様子から伝わりにくい」という、ストーリーを描く上での本質的な問題について語った。

 ハイド氏はまず主人公がしっかりと読者の目に入ってくるように“ドンっ”と大きくネーム(※ネームは、漫画を描く際のコマ割り、コマごとの構図・セリフ・キャラクターの配置等を大まかに表したもの)の中に描き上げた。さらに実際の大正時代の写真を見ながら、街の絵を描き上げたという。背景をイメージだけで描こうとしないで、しっかりと事実に基づきながら作業することが大切ということだろう。

 ハイド氏が指摘したのは、元の漫画は1コマ目から、大正時代の街の様子を俯瞰で捉えているが、「当時は上空から撮影するような技術がない」ということ。資料として当時の写真を当たっていくなかで見当たらない構図であり、それも違和感に繋がっているようだ。フィクションとは言え、画面外も含めた時代背景への洞察がリアリティを増し、作中の「時代」をわかりやすく伝えるということがわかる。

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