『鬼滅の刃』『天気の子』のルーツは神話にあった? 神話学者がエンタメ作品を考察
戦国武将・毛利元就が息子たちに授けた教えであり、政治の世界でも経済政策のキャッチフレーズとして使われた「三本の矢」。プロレスラーのオカダ・カズチカがマイクアピールの前置きで使う「3つ言わせください」。落語の三題噺などなど、筆者の思い浮かぶ範囲でも、3は今もさまざまな場で重宝されている。そのルーツは神話にあるのかもしれないと思いながら、あらゆる「3」に「三機能体系説」を当てはめてみたくなる。
構造を軸に現代と神話の接点を見つけていく著者の手法は、ジョルジュ・デュメジルをはじめ神話学の先人たちの分析方法を受け継いだものなのだろう。本書を読むと神話だけでなく、神話学への関心も深まること請け合いである。後書きでは、参考となる神話の入門書・辞典・研究書も挙げられている。読んだ後は神話・神話学を深堀りする以外にも、神話を下敷きに物語を創作してみるもよし、著者を真似て自分の好きなフィクションと似た構造の神話を探してみたり、スポーツ・ビジネス・科学など色々なジャンルで神話の影響を考えてみるもよし。お楽しみは3つで収まりきらない。