ノベライズで知る、『グッバイ、ドン・グリーズ!』&『地球外少年少女』の深い設定やキャラの心情

ノベライズで知る最新映像作品の深い設定

 磯光雄監督によるアニメ『地球外少年少女』のノベライズは、ライトノベルレーベルのガガガ文庫から『魔女と猟犬』シリーズのカミツキレイニー著で刊行。アニメが劇場上映された時と同様に『地球外少年少女 前編~地球外からの使者~』『地球外少年少女 後編~はじまりの物語~』の前後編になっている。

 磯監督といえば第29回日本SF大賞を受賞した『電脳コイル』が代表作。こちらもノベライズがあって、脚本家の宮村優子がトクマ・ノベルズedgeから全13巻で刊行した。ネット空間を現実に重ねて見せるMR(複合現実)デバイスの「電脳メガネ」が7歳から13歳の誕生日までしか使えなかったり、イサコという少女をアニメの視聴者には意外と思える人物が操っていたりとオリジナルの設定や展開も多くあって、映像化されなかった設定にも触れられる。

 『地球外少年少女』のノベライズはこれとは違い、アニメの設定もストーリーもほぼ踏襲。すでに見た人は文字によって展開を振り返ることができる。そこに描かれている未来ならではのテクノロジー描写は『電脳コイル』と同様だ。メタバースの可能性と問題点を指摘してみせたのが『電脳コイル』なら、『地球外少年少女』は月に人類が暮らすようになり、AIが発達した未来の姿を見せてくれている。

 舞台は2045年。月で生まれた登矢と心葉は、地球へ移住するために日本が運営する宇宙ステーション「あんしん」へと移り、地球の重力に慣れるリハビリを行っていた。そこに地球から大洋、美衣奈、博士の3人が見学者として訪れた時、彗星の激突という重大事故が発生する。管制室の大人たちから離れた場所に閉じ込められ、ネットも使えない状況で、子供たちが次々と起こる危機に立ち向かっていく。こちらもまた、読む人に“ゆりかご”から出て外へと向かうきっかけを与えてくれる物語だ。

 映像で描かれるそんなストーリーをノベライズは背景説明も交えて進めていく。「UN2」や「セブンポエム」や「宇宙バンジー」がどのようなものかも、ノベライズを読めばしっかりと理解できる。アニメで『電脳コイル』のキャラが一瞬だけ映る場面にも説明があって、そうだったんだと納得できるだろう。

 大ヒット中の映画『劇場版 呪術廻戦 0』にも北國ばらっど著のノベライズ版(原作/芥見下々、脚本/瀬古浩司)が出ている。映画のシーンが原作漫画よりも濃く説明されていて、映画から入った人に絶好のガイドとなっている。詳述は避けるが、五条悟と夏油傑が言葉をかわすシーンで傑の覚悟であり、悟の苦悩といった表情として出ない心情に触れることができる。読み甲斐のあるノベライズだ

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