「脳は10パーセントしか使われていない」は作り話? 人体の不思議に迫るノンフィクション『人体大全』が面白い

人体の不思議に迫る『人体大全』

 本書は後半になると、「感染症」「がん(癌)」「薬」など、私たちが日常で気にかける題材を取り上げている。そしてラストの第二十三章「命が終わるとはどういうことか」では、人はなぜ死ぬのか、死んだ後に何が起こるのかについて述べるのだ。繰り返しになるが、今なお人体には未知の領域が広がっている。しかも人体は現在進行形で進化している。そのため著者は、分からないことは分からないと、はっきり明記。だから内容を信頼できる。人体を熟知することで、病気や老いに対する正しい知識を得ることができる。人体の教科書は、人生の教科書でもあるのだ。

 なお本書の「短いあとがき」で著者は、2020年から始まった新型コロナウィルス症の状況を述べ、誰もがきっと同意することのひとつとして、「次回はもっとしっかり備えておこう」と記している。これは第二十章「まずい事態になったとき」の締めくくりに置かれた、ワシントン大学のマイケル・キンチの言葉、「わたしたちは百年前にスペイン風邪で何千万人もの人が死亡したときより、恐ろしい集団発生にきちんと備えられているとは言えません。ああいう経験がまだ繰り返されていないのは、わたしたちが特別しっかり警戒しているからではありません。これまでが幸運だっただけなのです」を踏まえたものだろう。幸運な時間は終わり、コロナウィルスとの戦いがどうなるか、先は見えない。こんな時代だからこそ本書を読んで、自分の体に関することに備えたいものだ。

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