永山瑛太が明かす、カメラを手に“撮る側”に回る理由 「僕、自分の芝居で満足したことがないんです」

永山瑛太が明かす、“撮る側”に回る理由

――ちなみに、今カメラはどれくらい持っているんですか?

永山:どれくらいだろう。とりあえず、片っ端からいろんなメーカーの機材を試してはいますね。まず、最初に自分で買ったのがキヤノン FXで、同じキヤノンだとF-1、デジタルの5D Mark Ⅱ。あとはニコン FM3Aにオリンパスのフラッシュ付きフィルムカメラ、リコー GR、GR2、GR3、ローライフレックスの二眼、コンタックス 645……。最も多いライカはM2、M6、M9、M (Typ262)、モノクローム、SL2-S。もしかしたら、抜けている機材もあるかもしれませんが、連載をやらせていただいた6年の間、ひと作品ごとのギャラをとにかく機材に注ぎ込んでいました。それでもまだ試したいカメラやレンズは山ほどありますね。

――そのなかから、現場に持っていくカメラを選ぶのは大変そうですね。

永山:連載をはじめたばかりのうちは、デジタルにフィルム、中判と、あわせて6台ものカメラを持って行っていました。今思うと、あまりに実験的すぎますよね。”撮られる側”の立場になって考えると、複数台のカメラで代わる代わる撮られたら撮影に集中できないし、ちょっと嫌です(笑)。

 そう気づいてからは、自ずと使用するカメラの台数も減っていきました。シャッターを切る回数、撮影時間、全てがコンパクトになりましたね。あえて中判を使って、フィルム2本分、24枚しか撮らないなど、わざと制限を設けて撮る場合もありました。

――24枚だけとは、思い切った挑戦ですね。

永山:篠山紀信さんに「今日は3枚しか撮らないから。瑛太くんよろしくね」と言われて、本当に3枚しか撮られなかった経験があります。逆に、時間が押しているにもかかわらず、編集さんの制止を無視して「すみません、あともう少し!」と日が暮れるまで撮り続ける小浪次郎くんのようなカメラマンさんもいます(笑)。3枚しか撮らないのも、満足いくまで撮影を辞めないのも、被写体への向き合い方としてはどちらも誠実ですよね。僕も”撮る側”にいるときは、自ら刺激的な方向に持っていくことで、誠意を見せたいなと思っています。

 写真は機材じゃなく、被写体との向き合い方が大事ですね。カメラは、結局のところ写真を撮るための機械に過ぎない。写真の話をするにしても、「あの写真、何のカメラで撮ったの?」より「あの写真のニュアンスは、どう演出しているの?」と聞かれる方が嬉しいし、楽しいです。

――本当に写真がお好きなんですね。今後、もしカメラマンとしてのオファーがあるとすれば、どんな写真を撮りたいですか?

永山:商業で、ですか? うーん。6年間も連載で撮らせてもらって何ですが、要望に応えられるだけの技術をまだ持てていないので、商業はちょっと向いていないかもしれません。その点を加味してくださるお仕事なら何とかって感じですけど。どちらにせよ、モノや風景より人を撮っていたいですね。プライベートでは、日々、家族の写真を撮り続けているので、それは続けていくと思います。

――撮り下ろしではなく、既に撮り溜まっている写真で一冊、見てみたい気もします。本作をきっかけに、永山さんの写真のファンになった方も多いでしょうし。

永山:まぁ、それは、いつか僕がこの世界からいなくなった頃に(笑)。ただ本作は、ここに出てくれている人たちのファンの方々が「どんな写真が載っているんだろう?」と手に取ってくださることが多いと思います。もちろん彼らの表情も見ていただきたいですが、僕としては、菅田将暉くんからはじまり、石田ゆり子さんで終わるまでの過程を感じてもらえたら、よりありがたいですね。6年間、尊敬する人たちを撮り続けてきて、撮り方はもちろん、僕自身にも変化、そして成長……はないかもしれませんが(笑)、確実に何かが変わっているのはお分かりいただけるはずなので。よければ、巻末に載っているエッセイもあわせて、僕がどんな思いで彼らを撮っていたかをイメージしてみてください。

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