直木賞候補で話題『同志少女よ、敵を撃て』がスマッシュヒット! 文芸書週間ベストセラー

『同志少女』売上ランクでも存在感

1月期ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(1月12日トーハン調べ)

1位『蜘蛛ですが、なにか? 16』馬場翁/著
2位『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』遠藤和/著
3位『蜘蛛ですが、なにか? 16 短編小説小冊子付き特装版』馬場翁/著
4位『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬/著
5位『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』瀬戸内寂聴/著
6位『転生したらスライムだった件 19』伏瀬/著
7位『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』佐藤愛子/著
8位『李王家の縁談』林真理子/著
9位『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ/著
10位『転生したら皇帝でした1~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~』魔石の硬/著

 1月12日の文芸書ベストセラー、注目はやはり4位にランクインした逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』だろう。アガサ・クリスティー賞史上はじめて全作品が高得点をつけて受賞に至ったという本作は前評判も高く、刊行後、瞬く間に重版を重ね1カ月で7万部を突破。さらに直木賞にノミネートされたことで話題を呼び、22年ぶりにデビュー作受賞なるかと注目を集めた。独ソ戦の激化している第二次世界大戦中を舞台に、女性だけで構成される狙撃訓練学校を卒業した、女性狙撃手・セラフィマの戦いの物語を描きだしているのだが、この訓練学校が実在していたというのも、多くの人の興味を惹いた理由だろう。〈アクションの緊度、構成、迫力は只事ではない〉と選考委員で書評家の北上次郎が太鼓判を押し、ロシア文学研究者の沼田恭子も絶賛する本作。残念ながら受賞には至らなかったが、1回目の投票では、今回W受賞になった2作と拮抗し、物語の構築力とともに戦争に対する誠実な視点をもつとして高い評価を得たという。しばらくはランキング上位に名を連ねることになりそうだ。

 続く5位は11月に逝去した瀬戸内寂聴、最後のメッセージ集となる『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』。昨年4月に発売されたものだが、故人を偲んで手に取る読者も多く、10万部を突破。〈私たちは死ねば、焼かれます。灰と骨になるだけですよね。でも、人間の心っていうのはどこにあるか、みんなもわからないでしょう? 心は焼くことができないんです。そして、その魂が残るのね。〉という言葉は、今、なおさら深く響く。収録されている多くがインタビューや対談をまとめたものであるなか、著者が書き下ろした文章にこんなものがある。〈人は愛するために生れてきたのです。九十九歳、数えで百歳まで生きてきて、さすがに「死」を目の前にして、つくづく想うことは、この一事です。〉老若男女の区別なく、多くの人を愛し愛されてきた彼女の言葉は、これからも読者の心を支え続けることだろう。

 7位にランクインした『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』の著者・佐藤愛子もまた、タイトルからわかるように瀬戸内寂聴と同世代。本作は佐藤にとって最後のエッセイ集であることが告知されている。シリーズ一作目となる『九十歳。何がめでたい』は130万部を突破するベストセラー。痛快で豪快な書きっぷりに笑い、そして励まされ続けてきたファンも多いことだろう。断筆宣言となる「さようなら、みなさん」は必読である。

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