東京藝大はかくも難関であるーー『ブルーピリオド』八虎が戦い続け、変化した650日間
第1話のTV放送前に「2021年 秋アニメ 期待度ランキング」で1位を獲得した『ブルーピリオド』(参考:この秋観たいアニメNo.1は『ブルーピリオド』2021年秋アニメ期待度ランキングTOP20発表《Filmarks調べ》)。12月3日(金)に放送された「Ep.10 俺たちの青い色」では東京藝術大学の入学1次試験を突破した「矢口八虎」が同級生「鮎川龍二」と共に湘南を訪れ、セルフヌードを描く様子が放送された。2次試験を目前に控え、物語は佳境を迎えようとしている。
作中で二浪四浪が当たり前だと語られる東京藝術大学。国内最難関の美大受験を通じて八虎はどのような変化を遂げたのか。本稿では原作コミックスの第1巻から第6巻における、現役合格を目指した八虎の2年間を振り返りたい。
対照的に描かれた八虎の変化
本作には対比となる場面がいくつか存在する。
例えば第1巻「【三筆目】全然焼けてねえ」では、美術部の活動に参加しながら描いた絵が散らばった部屋で椅子に座りながら眠りにつく八虎が描かれた。しかし第3巻「【11筆目】褒められが発生しました」では、自身の描いた絵が散らばった部屋で「好きなことをやるって/いつでも楽しいって意味じゃないよ」と心のなかで叫びながら、吸っていたタバコを親指の腹で潰す八虎が描かれている。
どちらも八虎が自室で過ごす様子が描かれた見開きのページであるが、前者は絵を描くことに夢中になっていたこと、後者は絵を描くことに苦しみを覚えていたことが表現されている場面と言える。
また第1巻「【一筆目】絵を描く悦びに目覚めてみた」で描かれた、宙を舞うようにして早朝の青い渋谷を描き、他者に理解してもらえる悦びを覚えた八虎。第5巻「【20筆目】俺たちの青い色」で描かれた、鮎川の溺れる海に飛び込むように鮎川と関わり、心情を共有しながら会話をする八虎。
前述の例と同様に、ふたつのシーンには青色の場面という共通点が含まれている。しかし八虎がそれぞれのシーンできづいたことは人にわかってもらえる悦びと、人をわかってあげる難しさという対照的な概念だ。
美術の道を歩む過程で、八虎は絵を描くことの楽しさと共に苦しみを、他者に理解されることと共に理解しようとすることを経験したと言える。
※以降、アニメ『ブルーピリオド』「Ep.10 俺たちの青い色」以降のネタバレが含まれます。