『俺だけレベルアップな件』で話題、SMARTOONの可能性とは? ピッコマ担当者に聞く、韓国発コンテンツの魅力

ピッコマ担当者が語る、SMARTOONの魅力

 『俺だけレベルアップな件』をはじめとした作品の大ヒットによって、電子マンガ・ノベルサービスの普及を牽引してきた「ピッコマ」。サービススタートの2016年4月から5年半を経た10月1日には、累計3,000万ダウンロードを突破。App Store(ブックカテゴリ)とGooglePlay(コミックカテゴリ)の合計は、グローバルでもセールス1位となり、いまや世界1位のマンガアプリと呼べる存在となっている。

 韓国発のフルカラー・縦スクロールのWEBTOONを「SMARTOON」という呼称で打ち出し、さらなる快進撃を続ける「ピッコマ」。その新たなコンテンツには、どんな可能性があるのか。運営の株式会社カカオジャパンにて、グローバル事業部 海外コンテンツチーム チーム長を担当している金アヨン氏に聞いた。(編集部)

WEBTOON文化の誕生


――金アヨンさんのお仕事の内容を具体的に教えてください。

金:韓国や中国の出版社や制作会社から漫画配信の権利を取得して、日本向けにローカライズするのが主な仕事です。権利を取得する作品は、韓国や中国ですでにヒットしている人気作から選ぶケースが多いです。

――韓国と日本では漫画業界にどんな違いがありますか? たとえば日本では集英社や講談社といった出版社が漫画の版権を持っていて、人気作品はアニメになったり、ゲームになったり、あるいはグッズになったりするなど、大きなビジネスの枠組みができています。

金:韓国の出版業界も基本的には同じような状況です。ただ、最近では漫画の主流がWEBTOONになったため、WEBTOONを作っているスタジオや制作会社が版権を持ち、出版社のような役割を果たすケースも増えています。力のあるスタジオは流通を担うこともあり、そこからさらに派生してさまざまなビジネスが生まれています。インターネット以降、コンテンツ力がある会社が、作品のヒットによって急成長するケースが目立っていますね。

――日本ではライトノベルの分野で似たようなケースがありますね。小さな出版社が『小説家になろう』から光る作品を見つけて、一大ヒットに繋げた例は少なくありません。韓国のWEBTOONの市場は、どのように整っていったのでしょうか?

金:韓国では1990年代後半から2000年代前半くらいにかけて、出版不況で紙の単行本や雑誌が売れなくなっていき、作家たちがだんだんと掲載の場を失っていきました。そこで一部の作家たちが、Webサイトやブログに自分の作品を掲載するようになりました。それがWEBTOON文化の始まりですね。当初は自分のブログに掲載するケースが多かったので、自ずとジャンルも日常系の読み切りが多かったのですが、ポータルサイトや漫画アプリの発展などにより、長編ファンタジーのようなストーリー性の高い作品も生まれるようになっていきました。今では文化の一つとして完全に根付いていて、ユーザーの生活の中にWEBTOONがあるような状況です。朝起きて読み、通勤中に読み、夜寝る前にも読む、という感じで、毎日習慣的にWEBTOONに親しんでいるユーザーがたくさんいます。日本だと、漫画というと白黒で横に捲るものですが、韓国ではフルカラーの縦読みという認識の方が強くなっているほどです。人気があるWEBTOONは単行本化されて、ユーザーはコレクションとして紙の本も買うという流れも生まれています。

――出版不況は日本でも同じようにありましたが、そこから一気にWEBTOONが発展したのは韓国ならではの流れだと思います。日本でもプロアマ問わず数多くの漫画家がTwitterなどで漫画を発表していますが、そうした作品はやはり日常系の読み切りなどが多いです。今のお話を聞くと、長編のストーリー漫画が成立するにはプラットフォームが必要不可欠なんだと感じました。

金:そうですね、WEBTOONを専門で扱う大きなプラットフォームができてこそ、多様なジャンルの作品が生まれると思います。韓国では、弊社との関係が深い『カカオページ』というプラットフォームがすごく人気で、あらゆるジャンルのWEBTOONが読める状態になっています。あとは『NAVER』も大人気で、その2社が特に市場を牽引していますね。『カカオページ』は2013年から事業をやってきたのですが、ノベルを扱い始めて、ノベルから漫画化するような流れができてから、ヒット作がどんどん生まれるようになりました。『ピッコマ』を代表するヒット作になった『俺だけレベルアップな件』にも原作となった小説があって、小説はそこまで人気ではなかったのですが、WEBTOON化したら人気に火がつき、逆に原作の人気も高まるという循環が生まれました。

【ピッコマ】「俺だけレベルアップな件」連載再開篇 15秒

――やはり、なろう系のヒットの構造と似ていますね。日本のコンテンツからの影響もありそうです。

金:韓国の作家は日本の漫画を読んで育った方が多いので、何かしらの影響は必ず受けていると思います。

WEBTOONはまったく新しいコンテンツ


――昨今、K-POPや韓国ドラマは世界中で大人気です。WEBTOONも新たな韓国発コンテンツとして、世界中で大人気となる可能性がありそうですね。

金:そうですね。ただピッコマはいわゆる「韓流」であることを全面に打ち出そうとはしておらず、あくまでも日本のみなさんが作品に自然に馴染めるようにローカライズすることに注力しています。実際、「これは韓流だから」という感じではなく、単純に絵が綺麗だからとか、作品が面白いからという理由でご覧になってくださるユーザーが多いようです。『俺だけレベルアップな件』も韓流ブームの文脈とはあまり関係なく、作品の力で読まれていると感じています。

――あくまでも作品の力で勝負していると。もともとK-POPもグローバルな展開を目指して、ハイクオリティなコンテンツをローカライズして届けたりしているので、戦略的には近しいかもしれません。日本におけるWEBTOONの状況はどう見ていますか?

金:日本の出版社からWEBTOONについてのご相談を受けるケースは増えています。日本の作家によるWEBTOONも、どんどん増えていくのではないでしょうか。WEBTOONは韓国発祥のエンタテインメントですが、形式として新しいものなので、まだ色々な可能性がありますし、新世代のクリエイターにとっても魅力的だと思います。

――たしかにWEBTOONは従来の漫画とはまた違う、新しいエンタテインメントを体験している感覚があります。従来の漫画は、コマ割りやコマ運びといった漫画特有の技術も洗練されていて素晴らしいものだと思いますが、WEBTOONには技術的にもさまざまな工夫ができる余地がまだたくさんあると感じています。また、Netflixで海外ドラマを観ているような感覚にも近くて、次から次へと読みたくなるクリフハンガーが見事な作品も目立っています。

金:読者の方からは、アニメーションの面白さと漫画の面白さの両方を感じるという意見をいただくことが多いですね。また、仰るように次々読ませるための工夫は、クリエイターの方々がすごく力を入れているところだと思います。韓国発のWEBTOONは一話あたりがけっこう長くて、その中にどれだけのコマを入れるか、続きが気になるところまで読ませるかが大事です。概ね3話までで続きを購入するか否かを判断するユーザーが多いので、それまでにいかに読者を夢中にさせるかが勝負なんです。



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