『名探偵コナン』いまだベールに包まれた“黒の組織”の謎を考察
※本稿は『名探偵コナン』のネタバレを含みます。
10月18日に発売される新刊で遂にコミックス100巻を迎える『名探偵コナン』。ストーリーもいよいよ佳境に入り、95巻のエピソードではコナンが追う黒の組織のボスの正体が判明した。しかしまだまだそのベールは厚く、今なお黒の組織には謎の部分が大きい。とりわけ組織の目的、彼らはなんのために活動をし、薬を開発しているのか。ここが今後のストーリーの焦点になっていくことだろう。本稿ではこれまでのストーリーに張り巡らされた黒の組織に関する伏線から、その目的について考察してみたいと思う。
様々な業界の重要なポストにまで影響を与え、暗殺や金、コンピュータソフトや薬の開発をする黒の組織。しかしその目的までは未だに謎に包まれている。組織は半世紀前から「極秘プロジェクト」を進めていることが示唆され、そこにコナンも深く関わっていることが灰原哀のモノローグによって明らかになっている。
コナンと黒の組織を繋げるのはAPTX4869に他なく、この「極秘プロジェクト」がAPTX4869に関するものということは間違いないはずだ。黒の組織の目的を解き明かす鍵を握っているのはやはりこの「極秘プロジェクト」、ひいてはコナンや灰原を幼児化させた毒薬、APTX4869がなんのために開発されたのかという部分だろう。
コナンや他のAPTX4869を飲まされた被害者には体内から毒物反応が出ない、証拠が残らない毒薬として殺人の目的で使用されていたが、開発者である灰原は毒を作っているつもりなんてなかったとコナンに対して語っている。つまりAPTX4869は別の目的で開発が進められていた薬品ということで、毒薬としての効果はあくまでも偶発的に出来たということだろう。となると元々何の目的でどういう効果の薬を開発していたのか。幼児化という副反応や様々な伏線などを考慮すると、若返りや不老不死がイメージされるが、これは作者の青山剛昌自身が雑誌「ダ・ヴィンチ」のインタビューで否定している。だとすればそれ以外の目的とは一体なんなのか。
その謎を解く上で重要な伏線となるのが、黒の組織とプログラムソフト開発で取引をしていたとされる板倉卓の日記である。37巻に収録された事件で組織とは関係の無い人間に殺害された板倉だが、生前に黒の組織とシステムソフト開発で取引をしていたことが明らかになり、当時板倉が記していたとされる日記をコナンが入手。そこには組織の一員・ベルモットと思われる“高飛車な女”が電話越しにこう語ったと記されていた。
We can be both of God and the Devil. Since we're trying to raise the dead against the stream of time.(我々は神でもあり悪魔でもある。なぜなら時の流れに逆らって、死者を蘇らそうとしているのだから…。)
また、その後のエピソードでベルモットが板倉に対しなんらかのシステムソフトを発注した事実が明らかになっているが、そのソフトの内容は未だに明らかになっていない。
一方、開発者である灰原はこのエピソードの直後にこうも語っている。
死者を蘇らせる秘薬……とでも言えば満足かしら?(中略)まあ安心しなさい…私の研究の目的はそんな夢のような薬じゃない。この地球のほとんどの人間にはその価値を見いだせない愚かしい代物…
ベルモットは「死者を蘇らせようとしている」と板倉に語っているが、灰原はそんな薬ではないとしている。ということは「死者を蘇らせる」はなんらかの比喩ということだろうか。