月刊オカモトショウ特別編 いまだから読みたい、萩尾望都&高野文子作品の色あせない魅力を語り尽くす

オカモトショウが語る、萩尾望都&高野文子

構図の妙が冴え渡った高野文子『黄色い本』

――高野文子作品についてはどうですか?

ショウ:前回も話しましたけど、倖介が『黄色い本』を誕生日にプレゼントしてくれたんですよ。「高野文子、まだでしょ?」って(笑)。

白石:どれから読んでもらおうかな?って考えたんです。高野先生の作品は物語性があるものから抽象的な作品までのレンジが広くて。『黄色い本』は物語の強度が高いし、視線誘導というか、構図の妙がビシビシに冴えわたってるので、まずはこれかなと。

ショウ:『黄色い本』、めちゃくちゃよかったです。その後、初期の『絶対安全剃刀』を読んでから『黄色い本』を読み直すと、さらに良さがわかりました。

白石:『絶対安全剃刀』、ヤバいよね(笑)。

ショウ:でも、どこがすごいのか上手く説明できないんだよね。

白石:まず、説明が少ない(笑)。ある種不親切にも見えるけれど、むしろ「作家はこの説明を必要としていない」とも言えるわけで、その飛躍のテンポが唯一無二。そしてとにかく構図や絵の迫力に圧倒されるんです。すべてのコマに動きがあって、それぞれが1枚の絵として成り立っていて、説得力がすごい。『黄色い本』は冒頭、「本を読んでいる女学生がバスを降りるシーン」から始まるんですけれど、わずか4P読むだけで高野文子にしか出せないタイム感が全開。よく「手塚治虫は映画の手法をマンガに持ち込んだ」って言われるけど、高野先生は僕らが知らない映画を観ているのかもしれない(笑)。

ショウ:詩的な表現もあるし、行間にもすべて意味があって。でもたぶんご本人は、“抽象的”とか“詩的”とは思っていない気がするんですよ。自分のなかにある真実を突き詰めて、マンガとして表現したらこうなった、という。谷川俊太郎さんの詩を読んだときも、同じような感覚になりますね。

――二人の話を聞いてると、読み返したくなりますね……。

白石:ぜひ。僕もまた、買い直さないと。高野先生のマンガ、すぐ人にあげちゃうから、手元にないんですよ(笑)。

ショウ:そんなに読んでほしいんだ(笑)。

白石:そう、高野文子のマンガのすごさを一人でも多くの人に伝えたい(笑)。ちょっと余談になっちゃうけど、一時期、高野作品のフォロワーみたいなマンガが増えて、ちょっとイヤだったんですよ。でも、最近は「すごい作品に影響を受けるって、当たり前だよな」と思うようになって。

ショウ:音楽だと当たり前にあることだけどね。そもそも他人の曲を演奏するところから始まるから。

白石:高野先生も萩尾先生も現役だから、この先もすごいマンガを描くと思うんですよね。そうするとさらに影響される人が増えて。

ショウ:100年後くらいに、若い作家が「萩尾先生に影響を受けました」っていうこともあるだろうしね。それこそ文化の遺伝子だね。

白石:確かに。ここ数年だと、『ダンジョン飯』の久井諒子先生が大好きです。ショウ、『ひきだしにテラリウム』は読んだ?

ショウ:読んでない。

白石:ぜひ読んで!SFオムニバスだし、絶対好きだと思う! ……と、こんな感じで普段からレコメンドしています(笑)。

ショウ:まだまだ話し足りない(笑)。また近いうちやろうよ。

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