藤本タツキ『ルックバック』単行本が人気の理由とは? 再発見された“コミックスの魅力”
単行本の『ルックバック』を手に取って感じたもの
本作を描いた藤本氏の編集担当を務める林士平氏は、単行本の発売日に「是非に皆様の本棚に並べて頂きたいです。」という言葉をTwitterに投稿した。当然、本棚に並べるためには単行本を購入する必要がある。
実際に『ルックバック』の単行本を手に取ってみると、学校でもよく用いられる中質紙に印刷されているため、藤野や京本の4コマ漫画が掲載された学年新聞を読みながら香る紙やインクの匂いに懐かしさを覚えた。そして単行本の重量が100gほどしかないことに驚いた。これはコンビニで販売している一般的なおにぎりと同じくらいの重さである。他のジャンプコミックスと比べてもひときわ軽くて薄いが、物語の濃密さは他の作品と引けを取らない。
驚いたのは単行本の重さだけではない。表示に適した解像度を比較すると、Webよりも紙の本の方が数倍高いとされている。実際に『ルックバック』を単行本で見ると、藤野や京本が歩く田んぼや山々が広がる背景やスキップをする藤野に降り注ぐ雨、悲嘆に暮れる藤野の影など、藤本氏の描くきめ細かな線の1本1本が目に留まり、手を何往復もして描かれたであろう筆捌きを感じたのである。
Webやアプリによって、より多くの人に漫画を届けられるようになった。それでも紙特有の匂いや物語が詰まった本の重さを感じながら、高い解像度で読むことのできる単行本で作品に触れるからこそ見える景色も存在するはずだ。「ジャンプ+」で掲載された『ルックバック』はWebと紙の媒体が両立できることを示した作品と言えるだろう。