別荘複数持ち、豪華客船貸切に超高層タワーオーナー……『名探偵コナン』鈴木園子は"理想的"な金持ちキャラ?
しかし『コナン』の園子が他の金持ちキャラクターと一線を画しているのは、彼女に嫌味を感じない点だ。他の作品における金持ちキャラは庶民の文化を知らなかったり、小馬鹿にしたり、そうしたカルチャーギャップで読者を笑わせたりする。しかし『コナン』における園子は、金持ちを強くひけらかさない。学校には使用人の送迎ではなく蘭と二人で歩いて登下校をしているし、ゲーセン(単行本27巻収録「バトルゲームの罠」)やギャル文字(単行本51巻収録「ロシアンブルーの秘密」)、カラオケ(単行本59~60巻収録「カラオケボックスBOXの死角」)といった、どちらかといえばハッキリ庶民派な文化にも強い。
なにより園子は蘭をはじめとした、決して金銭感覚が近しいわけではない友人とも分け隔てなく接している点も嫌味がない。園子は蘭との友情を「不確かでもろいもの」と揶揄された際に、こう言い返している。
“バッカじゃないの!?不確かでもろいからいいんじゃない!!だから、心が通じ合ったときにあったかくなれるのよ!!” 単行本67巻収録「黒きドレスのアリバイ」より
友情は不確かでもろいもの、そう誰よりも園子自身が分かっているからこそ、蘭という最大の親友を思いやり、コナンや少年探偵団などの仲間たちもひっくるめて認めている。自身の財閥の令嬢という立場や表層的な金銭を無駄にひけらかさず、ここぞという時はその立場を使って友人たちを楽しませるために様々な場所へ招待する。そんな園子は日本漫画史でも最も理想的な“金持ちキャラ”なのかもしれない。