『怪獣8号』異例の“中年ヒーロー”で人気作に 戦う大人のカッコ良さを描く意義とは?

『怪獣8号』おっさんのカッコ良さ

※以下ネタバレを含む。

 怪獣襲撃事件がきっかけでレノとの関係を築いたカフカは、彼に背中を押され再び防衛隊を目指すことを誓う。しかしカフカの目の前には、怪獣のような姿をした1匹の虫が。それを飲み込んでしまった彼は、禍々しい姿をした怪獣の姿に変身してしまったのだ。

 後に「怪獣8号」のコードネームが与えられる怪獣となってしまった彼は、その正体を隠しながら防衛隊入隊を志す。まさしく名前の通り、「変身」に悩まされる主人公となったカフカ。しかし彼は仲間や市民のピンチであれば、迷わず強力な怪獣8号へと変身した。市民の前ではもちろん、入隊試験中や絶対にバレてはならない上官が見ている前でも、怪獣となり他人のために戦う。これらの場面からは、カフカの大人だからこその覚悟や独特の哀愁が見て取れる。この行動は未熟さが残る少年少女では、簡単にできることではないだろう。確かにカフカは落ち着きもなく若者に張り合い、飲みの席では絡む典型的なおっさんだ。しかし底を知りながらも努力を重ね、上手くはできなくても他人を救う彼を誰がカッコ悪いと思うだろうか。

 そしてこれは空想上だけの話ではない。世の中にはなりふり構わず取引先に謝罪する上司を見て、ダサいと思う部下もいるだろう。しかし家族のことを考えながら、下げたくない頭を下げるおっさんのどこがカッコ悪いだろうか。そんな上司も会社のため家族のために自身のプライドを差し置ける、カッコいい「おっさん」なのだ。

 大迫力で描く怪獣バトルや、厨二病要素満載の設定の数々で漫画好きを虜にする『怪獣8号』。本作はバトルはもちろん、怪獣に関しての謎がひしめくミステリー、過去の約束やライバルを取り巻く人間ドラマなど、数々の魅力的な要素が所狭しと盛り込まれている。しかしその中心に堂々と座り、キャラクターや読者の心を動かすのは、何を隠そう「おっさん」だ。本作は“おっさん=ヒーロー”の価値観を提示しただけでも、素晴らしい作品であると言えるだろう。

■青木圭介
エンタメ系フリーライター兼編集者。漫画・アニメジャンルのコラムや書評を中心に執筆しており、主にwebメディアで活動している。



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