葛西純が語る、46歳にして全盛期を迎えた心境 「コロナがなけりゃ、家が一軒建ったたはず(笑)」

葛西純が語る、映画と自伝本

 デスマッチファイター・葛西純の自伝『CRAZY MONKEY』(サイン本はコチラ)出版からおよそ半年、その熱が冷めやらぬ中、ドキュメンタリー映画『狂猿(きょうえん)』が5月28日に公開された。自伝発売と映画公開。そんな偉業を達成したレスラーが過去にいただろうか? しかも、こんな短期間に。そう葛西純はデスマッチの歴史だけでなくプロレスの歴史も変えてしまった。

 今回、そんな46歳にして全盛期真っ只中の葛西純に映画『狂猿』、そして先日行われた“全日本プロレス”でのデスマッチについて聞いた。(佐々木康晴)

コロナが変えたエンディング

――制作の途中でエンディングが変化したみたいですね。

葛西純(以下、葛西):実は最初の編集の時点では、エンドロール前の映像で終わる構成になっていたそうなんですよ。「いや監督、さすがにシュールすぎるだろ!」って(笑)。そこは新たな映像を加えてもらったみたいです。

――なるほど(笑)。デスマッチ・ファイターの日常は続いていく……的な感じですかね。川口監督は先日のラジオ『真夜中のハーリー&レイス』に出演した際にも言ってましたが、近年のプロレスはあまり見ていなかったとのことでした。

葛西:みたいですね。でも、「プロレス好き」「デスマッチ大好き」「葛西純大好き」の人間だったら、ここまでのドキュメンタリーは撮れてないと思います。言うなら川口監督だからこそ撮れたドキュメンタリー作品。好きだとグイグイ来すぎたり、逆に萎縮してつまらないものになっていたんじゃないかな? 監督はあくまで一人のパパとして接してくれたので。あとは佐久田(俊行)との試合の映像ですよ! これまで、プロレスの試合映像で、あんなものは見たことがなかった。

――しかも長時間で見せてくれて、ファンとしても嬉しかったです。竹田(誠志)選手の映ってはいけないものも、ちゃんとアップで映ってましたね(笑)。川口監督、正気かな?と思いました。

葛西:あれは100%コンプラアウト(笑)。でも、ああいうシーンも含めて、この映画は今までデスマッチに触れたことのない人に見て欲しい。正直、変な言葉を使えば「見世物」という要素もあるから、あのシーンで「コンプラの時代にこんなのあるのかよ?」と驚いて、会場に来て欲しいですね。

――この映画でも幾度となく触れられていますが、コロナがもたらした影響の大きさを改めて再確認しました。そもそも最初はアメリカで復帰して、日本に帰ってきて超満員の後楽園ホールでエンディングになる予定だったと聞いていました。実際に、アメリカでの模様を弊社の自伝『CRAZY MONKEY』のカラーページにも入れようと話していました。

葛西:そうなんですよ。アメリカに息子を連れていって、異国の地で、お父さんを応援する熱いファンが、こんなにいるんだぞってところを見せたかったですね。

――想像していたエンディングとはまったく違うものになりましたが、それも含めて運命的でした。そして試写には多くのレスラーが来ていましたが反応はいかがでしたか?

葛西:まず(プロレスリング)FREEDOMSの選手たちは、ほとんど何も言ってこないですね(笑)。同業者である以上、ジェラシーはあると思います。すごいと思っても口に出すのは癪に障るというか。

 エル・デスペラードには「本当にいい刺激をもらいました。俺、めちゃくちゃ悔しいです。プロレスラーとして負けた感がある」って言われたので、「それを言ったら、こっちは新日本プロレスで、今いちばん注目を浴びている、あんたにヤキモチ妬いてるんだけど」と言い返したら、笑ってましたね。

――映画の中では、様々なレスラー・葛西純に対する評価が語られていました。

葛西:みんな俺っちに対してこんなことを思っていたんだ、というのはありましたね。特に松永(光弘)さんの「本間朋晃、シャドウWX、山川竜司が自分を潰しに来たけど、その下から葛西純がきて、3人を挟み撃ちにして潰した」と言っていて、いろいろと納得しました。

――松永さんのコメントはすべて分かりやすかったです。それに比べ、藤田(ミノル)選手の“漫才”と“コント”の例えは……。

葛西:あれは俺っちも全然ピンと来てない(笑)! 藤田さんらしいですけどね。あとはダニー・ハボック(2020年5月に死去したアメリカのデスマッチファイター)のコメント。俺っちのことは好きだと聞いてたけど、そんなことを思ってくれていたんだという……。

――実家でのお母さんのインタビューも収録されてました。お母さんはもう映画は見ていますか?

葛西:まだ見てないです。正直、見て欲しいような、見せたくないような……。風俗に通って、どうのこうのみたいのを知られるのは、ちょっとね……。

――しかも、その風俗の跡地に聖地巡礼してましたからね(笑)。

王道・全日本プロレスのリングでのデスマッチ

――3月18日に王道・全日本のリングで石川(修司)選手とデスマッチを行いました。終えてみていかがでしょうか?

葛西:正直、おいしいと思いました。自分は全日本からプロレスにのめり込みましたから、その全日本を狂わせたというのは、すごくおいしい役割でしたね。しかも、全日本の歴史のなかで初のワンマッチ興行。

――確かに新日本プロレスだと藤波(辰爾)選手と木村(健悟)選手の試合とかが浮かびますが、全日本のワンマッチ興行はでてこないですね。石川選手は久しぶりのデスマッチでした。

葛西:6年ぶりらしいです。やっぱりデカくてやりにくいし、力もあるけど、かなりナーバスになってるなって感じました。そこは自分の方が自然体だったかな。

――全日本でのハードコアマッチ2戦、デスマッチ1戦を終えていかがですか?

葛西:王道というのもいいけど、そこに縛られすぎるのはどうなんだろう?って思いますね。小さい頃に見ていた全日本、四天王プロレスの全日本、今の全日本、全部別物ですよ。外野の勝手な意見ですが。

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