葛西純、川口潤、佐々木貴が語る、映画『狂猿』の魅力 「エンドロールが始まっても席を立たないで」
デスマッチのカリスマ・葛西純のドキュメンタリー映画『狂猿(きょうえん)』が、5月28日に公開された。リアルサウンド ブックでは今回、公開初日の舞台挨拶イベントに参加。主役の葛西純、監督の川口潤、そして葛西純が所属するプロレスリングFREEDOMSの代表であり、自身もデスマッチファイターである佐々木貴へのインタビュー取材を行った。2ページ目には舞台挨拶のレポートも掲載している。(編集部)
葛西純「映画がどう成長して、大きくなっていくか楽しみ」
――ようやく初日を迎えました。心境はいかがでしょうか?
葛西純(以下、葛西):1年半の制作期間を経て6回くらい見てるので、正直、「ようやく終わった」という気持ちもあったんですよ。でもこうして、コロナの影響がある中、お客さんが入っているのを見ると、ようやく始まったんだなと再確認しました。この映画がどう成長して、大きくなっていくか楽しみです。
佐々木貴(以下、佐々木):僕は制作側で携わった人間なので、やっとたどり着けたという感覚が大きいですね。今日、劇場に来た時に昼の回を見終わったお客さんの顔と、夕方の回を待ってるお客さんの顔を両方見れたんですよ。終わった人は満足した顔で、これからの人は期待でザワザワしてて、それを見たらもう喜びの感情しかないです。
川口潤(以下、川口):どんな映画でも賛否両論あるので、コアな人からしたら「物足りない!」「続編作って!」とか言われたりするんですけど(笑)、僕はそれがすごく楽しみなんですよ。そういうところから、皆さんそれぞれ自分の人生に活かしてくれると思っているので。
――映画の内容もそうですが、コロナウイルスの影響で本日もひとつずつ席を空けての上映です。
葛西:これは本当に不本意ですが、この映画の主演は葛西純なんですよ。でもね、助演は?と聞かれたら、それはコロナになってしまうんですよ。それだけでもムカついてるのに、ここに来て「映画は公開できるのか?」ということにもなって……。映画のエンディング含め考えていたものとは変りましたけど、無理やりポジティブに考えて、こういうことが無ければ撮れなかった作品と考えるようにしてますね。もう、そんな風に思うしかないです。
佐々木:実際に興行も無くなって、アメリカ遠征も無くなって、そこから小規模でしたが興行再開(プロレスの興行再開はプロレスリングFREEDOMSが最初だった)という流れを、葛西純の密着とは別に追ってもらっていました。もちろん、コロナがなければどんなエンディングだったのか?と思うこともありますが、これからコロナの影響がおさまった時に、10年後、20年後、30年後に見返した時に「こんなことあったな」と振り返ることができるという点においては、何かを残せたんじゃないかなと思っています。
――確かに興行の現場がどうだったか?という記録はあまりないかもしれません。
川口:確かにそうですよね。僕は全員が共有する壁みたいなものだと考えていて、もしかしたら何もなかったら葛西さんが「スーパーマン」であることで映画は終わっていたかもしれない。こんな言い方は本当に嫌ですけど、ドキュメンタリー映画として、ここまでのものを撮れたという面もありますよね。
――佐々木代表から見た、川口監督の魅力はなんでしょうか?
佐々木:レスラーって、見られてると「レスラーの自分」になるんですよ。試合じゃなくても、周りから見られているとONになるんですけど、川口監督のキャラクター・人間性の効果で自然体でいれちゃう。川口監督だからこそ、葛西純が弱音を吐く部分を撮れたり、素の部分が出たんじゃないんですかね。違う人だと本当に「スーパーマン」で終わってたかもしれない(笑)。正直、同じ団体にいても、ほとんど見せたことのない姿もありました。これを引き出した監督はすごいです!
川口:いやいや……。葛西さんは最初からオープンだったので、ずっとそのまま接してくれたという印象です。
――川口監督の中で、プロレス観は変化しましたか?
川口:プロレスに対する印象は変わらないのですが、デスマッチというものを撮影のときに初めて見て。これは究極のプロレスだと思いました。自分は生まれ変わっても絶対にやらないですが(笑)。
――葛西さんから映画をまだ見てない方に伝えたいことはございますか?
葛西:エンドロールが始まっても席を立たないでください!
佐々木:あと、世のお父さんには全員見て欲しい!