『進撃の巨人』最終巻は何を伝えたかったのか? 11年半の連載で描き続けた素朴な気持ち
『進撃の巨人』(講談社)の最終巻となる34巻が発売された。諫山創が「別冊少年マガジン」で連載していた本作は、巨大な壁に囲まれた都市で暮らす人類と巨人の戦いを描いたダークファンタジー漫画。
母親を巨人に食い殺された少年・エレンは幼馴染のアルミン、ミカサと共に巨人と戦う調査兵団へと入隊。巨人との戦いで多くの仲間たちを失いながらも、やがて巨人の正体と、この世界の真実について知ることとなる。
以下、最終巻のネタバレあり。
すべての巨人を操る「始祖の巨人」の力を手に入れたエレンは、壁の中に閉じ込められた無数の巨人を開放する。エルディア人のために全人類の8割を虐殺する「地ならし」をおこなおうとするエレンを止めるため、アルミン、ミカサ、リヴァイたち調査兵団の生き残りは、ライナー、ピークたち敵対するマーレー国の戦士と手を組み、ヒィズル国から譲り受けた飛行挺で、巨大な怪物となったエレンの背骨に飛び移る。
まずは「地ならし」を止めるため、エレンに取り込まれた「獣の巨人」の力を持つジークを倒そうと目論むミカサたち。しかしそこにエレンによって複製された歴代の九つの巨人たちが現れる。一方、巨人に飲み込まれたことで「道」(エルディア人全員が共有する一種の精神世界)と繋がったアルミンは、ジークと出会う。
ジークは生命の性質は「増える」ことにあり、今、人類に起こっていることは「恐怖に支配された生命の惨状」だと語る。元々、ジークは「始祖の巨人」の力によってエルディア人の生殖能力を奪うことを目論んでいた。つまりエルディア人全体の安楽死こそが彼の目的だったのだ。
生き伸びるための凄惨な戦いを描き続けてきた本作なだけに「なぜ負けちゃダメなんだ?」「生きているということは…」「いずれ死ぬということだろ?」というジークの問いかけは、とてつもなく重い。
対してアルミンは、幼少期の思い出や、仲間と市場を歩いている時に感じた「なんでもない一瞬」の気持ちを語ることで「生きること」を肯定しようとする。壮大な戦いが描かれた最終巻だが、結末は多層的で読者に解釈を委ねる場面が多い。
「進撃の巨人」の力で未来を見たエレンは、アルミンたちが世界を救った英雄にするために「虐殺者」としての汚名を引き受けようとした。しかし、アルミンたちが止める結末がわかっていなくても「オレはこの世のすべてを平らにしてたと思う」とエレンは語る。理由を言語化できないエレンだが、その後「お前は自由だ…」と父親から言われた赤ん坊の頃の記憶が挟み込まれる。
仲間のためだったのか? 自由意思を貫いた結果なのか? エレンの真の動機については「好きなように解釈していい」ように描かれていると感じた。それは物語の結末についても同様だ。