『ザ・ファブル』の原点! “環状族”を描く『ナニワトモアレ』が圧倒的に面白い理由

『ナニワトモアレ』が圧倒的に面白い理由

 2000年から始まり足掛け14年にもわたって「週刊ヤングマガジン」に掲載された、南勝久の『ナニワトモアレ』ならびに『なにわ友あれ』。通称『ナニトモ』として知られるこの作品がド傑作であることは、広く知られていることだと思う。

 舞台は1989年。当時、夜間の阪神高速環状線では「環状族」と呼ばれる若者たちが、チームを組みつつ道交法ガン無視で走り回っていた。彼らの走り方は、車線も一般車も関係なしのやりたい放題。サスペンションを固め車内にはロールバーを入れ、エンジンにすら手を入れたりして車を改造。それを乗り回しケンカに明け暮れる環状族は、若い女の子によくモテた。主人公グッさんとその悪友であるマーボは、ナンパ目的で足を踏み込んだ環状の世界に魅せられ、いつしか環状族として走りにケンカにのめり込むようになっていく。

 80年代の終わりから90年代にかけて阪神高速を走り回っていた環状族が主役の漫画ということで、当然ながら当時彼らが乗っていたクルマが大量に登場する。劇中でも説明されているが当時の環状はシビックの全盛期で、ワンダーシビックこと三代目シビックを筆頭に、今でいうネオクラシックカーがゴロゴロ登場。とにかく猫も杓子もシビックという状況を描写しつつ、主人公グッさんの乗るS13シルビアやマーボのスプリンタートレノ(AE86)、CR-Xやスターレットといった往年のスポーツカー/ツーリングカーが要所要所で出てくるのも見所である。

 環状族の走りの描写も濃い。作者本人が元環状族ということから、実際の環状線の状況がリアルに描写され、走ったことがある人なら登場人物がどのあたりを走行しているのかしっかり理解できる。コーナーの位置とスピードメーターの速度表示の噛み合い方や、車両の操作の描写も地に足がついており、車に関する描写だけでも満腹である。

 と、ここまで書いたところで梯子を外すようなのだが、実のところナニトモの面白さは車や走りに関する描写以外の点にある。この漫画は走り屋の漫画ではなく「環状族の漫画」であり、この点がナニトモを独特な内容にしている。

 そもそも環状族とは、関西ローカル色の強い集団である。劇中でテッポー(という名前の登場人物がいるのである)が説明するところによれば、そもそも走り屋の集団が、暴走族より偉そうにして我が物顔で走り回っていること自体が全国的には珍しい。理由は単純、元は単車で暴走族をやっていた連中が、そのまま箱車に乗り換えて環状へ上がったからである。そのため、どんなに走りが上手くても、チームが集団で走り回る環状では単独で生き残ることは難しい。環状を攻めるなら、まずチームに入るなり新しくチームを作るなりして徒党を組み、さらに他チームとの抗争を生き延びて存在感を示すしかないのである。

 この、環状族は走りとケンカの両方を要求されるという点が、ナニトモの物語を奥深くしている大きなポイントだ。物語を大きく動かすのは走りではなくチーム対チームの抗争劇であり、その中で多様な登場人物が活躍したりしなかったり、男を磨いたり磨かなかったりするのである。

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