【漫画】50歳の漫画家が“車中泊”で日本一周? 小田原ドラゴンが語る、ゆるゆる車中泊の魅力
『チェリーナイツ』(週刊ヤングマガジン)や『コギャル寿司』(ヤングマガジンアッパーズ)などの作品で知られる漫画家・小田原ドラゴンの“車中泊漫画”『今夜は車内でおやすみなさい。』(ヤンマガWeb)が、Twitterを中心に話題となっている。単行本第1巻は各書店、オンライン書店で売り切れが続出し、車中泊の模様を伝える小田原ドラゴンのTwitterが頻繁にバズるという事態だ。
近年“ソロキャンプ”がブームとなり、その流れで“車中泊”も注目されているが、作中の主人公・シャーク小笠原の車中泊はそれらとは一線を画す。ヤンマガWebのイントロダクションにあるように「映えない! キラキラしない! でも、自由と浪漫は売るほどある」。この一文こそがシャーク小笠原の車中泊を表している。
車中泊を始めたきっかけにも哀愁を感じてしまう。
かつての栄光が過ぎ去り、工場でアルバイトをしながら、アダルト雑誌で漫画を描き続ける日々を過ごしていたシャーク小笠原。年齢が50歳を迎え、将来の不安と孤独を感じ夜中に車で遠出したことから始まる。そんな等身大の旅が、一定層の読者に強く何かを訴えかけ、熱狂させる。
そんな作品を執筆しながら、現在「日本一周車中泊旅行中」の小田原ドラゴンにインタビュー。車中泊ならではのエピソードやその魅力、これからの旅について語ってもらった。(佐々木康晴)
『今夜は車内でおやすみなさい。』第1話
読者の声が正しいとは限らない
――現在、どちらにいらっしゃいますか(4月15日の取材時)?
小田原ドラゴン(以下、小田原):今は高知の四万十川の近くの道の駅です(道の駅 よって西土佐)。最近できたばかりの綺麗なところで、その場で捌いたカツオを食べられるんですよ。
――素敵なところですね。漫画にも描かれていましたが、本当に日本一周している最中とのことですが。
小田原:そうなんです。車内で漫画を描きながら(笑)。
――(映像を見て)すごい! 本当に車内で描いているんですね。小田原さんのTwitterを見ていると、読者と情報を交換しながら行き先や食べるものを決めたり、縛られていない感じがとても素敵だと思っていました。その場所も読者の情報ですか?
小田原:そうです。この後は柏島という、海がものすごく透明で「船の影がそこに映ったときに船が浮いているように見える」というスポットがあるんですけど、そこをオススメされたので、行ってみようと思います。本当はそんなに行きたくないんですけど……。
――行きたくないんですか(笑)?
小田原:でも、オススメされたときに「行く」って言ってしまったんで、向かっています。ここからだとすごく遠くて、着くときには夜なんですよ。
――船の影すら映らないですね……。基本的にオススメされた場所、食べ物は試していますか?
小田原:なるべくそうしています。でも、自分に合わない食べ物とかはありますね。和歌山ラーメンの美味しい店を教えてもらって、そこには行けなかったので、自分で店を調べて食べてみたんです。そこは家系ラーメンのスープを薄めて、3〜4日放置して、かつ生臭くなってきた感じのスープで、失敗でした。普通、ラーメンのスープって我慢して飲まないようにしたりするじゃないですか? そういう気分にまったくさせない味で。おそらく、その店が特別にそうだったんだと思いますが。
――なるほど(笑)。お風呂とかはどうしていますか? その土地土地の温泉などありそうですが。
小田原:僕は温泉にまったく興味がなくて、体を洗ってでるだけですね。温泉に行っても浸からないときもあります。
――ご飯はどうしていますか? 漫画だと料理道具も車に積んでいたと思うのですが。
小田原:道具はあるのですが、燃え移りそうで怖くてやっていないです。買うか外食ですね。その土地のスーパーに行くと、特色があるのでそういう楽しみも増えたのと、それが漫画のネタにもなるので。
――旅を長く続けていると、様々なことに麻痺してネタに困ることはありますか?
小田原:ネタはなければ、それはそれでいいのかなと思っています。本当はよくはないんでしょうけど、行ってみたらそこまで大したことなかったとか、食べたものが期待外れとか、そういうのを描いていければと思います。
――その緩さも作品の魅力のひとつですよね。そこに共感できたり羨ましがる読者は多いと思います。Twitterを見ていると、中年男性らしき人たちからの信頼が厚いと思うのですが?
小田原:そうですね。そういう読者の人の中から、いつか自分の漫画を真似して「ライトバンを買いました」という人が現れたりしたら嬉しいですね。