『夜桜さんちの大作戦』ドタバタラブコメからバトル漫画へ ジャンプ漫画王道の展開に注目

作品も能力も“開花”『夜桜さんちの大作戦』

 作戦決行まで残り72時間となった夜。夜桜家の人々は、大きな行事(ミッション)の前の伝統行事である夜のお花見「夜桜夜宴」を楽しんでいた。英気を養うために家族が馬鹿騒ぎをする中、六美は「タンポポ幹部、皮下の逮捕」、アジトに拘束されている「実験体の解放」、そして、六美たちの父親でタンポポとつながりがあると思われる「夜桜百の真相解明」の3つが「夜桜前線」の目的だと宣言する。

 その後、太陽は長男の凶一郎から2人だけの第4の任務を与えられる。それはタンポポが所有する、先代夜桜家当主である六美たちの母親の「遺体を回収しろ」というものだった。太陽に話した理由はあくまで「保険」と言う凶一郎だったが、母にまつわるおぞましい真実を兄弟には知らせたくないという彼の優しさと、太陽に対する信頼が伝わる場面である。

 そして翌朝、太陽たちは、タンポポのアジトへと向かう。島の地下にあるアジトは旧日本軍の基地を利用した全長1000メートルのアリの巣のような構造で、皮下は中枢部にいるという。夜桜家の愛犬・ゴリアテの体当たりで入り口の開閉口を破壊しようと目論む夜桜家。しかし入り口には、タンポポ幹部「虹花」のアカイが待ち構えていた。

 タンポポが夜桜の血「ソメイニン」を研究する過程で生まれたドーピング薬・葉桜の完全適合者として桁外れの力を持つアカイは、炎の力「火神の手」(フチテク)を放つが、夜桜家長女・ニ刃が先陣を切り「桜流し」で炎を打ち返す。その隙に太陽たちはアジトへと潜り込むのだが、ニ刃はアカイと対決することになる。

 ここからは、ジャンプ漫画王道の展開で、夜桜一家とタンポポの敵幹部との総当たり戦が展開されるのだが、定番だとわかっていても「ついに来た!」と気持ちが盛り上がる。

 ラブコメ色が強かったため、バトルに関して抑制気味だった本作だが、ド派手な異能力バトルへと向かうために「タンポポ」「ソメイニン」「葉桜」「開花」といった設定を着々と準備し「ついに爆発した」と言えるのがこの8巻である。

 炎で攻撃してくるアカイに対して、ニ刃は敵の攻撃を受け入れ無効化する「包容」の開花で応戦。アカイの攻撃を受け止め、悪意を昇華する。ニ刃が「包容」を使う場面では大ゴマが駆使されており、本誌連載で読んだ時は「漫画として一気に華やかになった」と思った。太陽だけでなく作品自体が一気に「開花」したと言えるバトル展開である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『夜桜さんちの大作戦』(ジャンプコミックス)8巻
著者:権平ひつじ
出版社:集英社



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