大野いと、大人びた姿に感じる“ぬくもり” デビュー10年目の写真集『mellow』で見せた成熟

大野いと、大人びた姿に感じる“ぬくもり” デビュー10年目の写真集『mellow』で見せた成熟

未来まで続くぬくもり

 落ち葉とともに、赤いドレスでフィナーレを飾る。満開の花や生茂る緑色の葉に比べると、落ち葉はどこか物悲しい印象があるが、マイペースに笑う大野いとと踊るように舞う落ち葉が、日々を自由に楽しむことの大切さを全身で伝えてくれている。新型コロナで自粛生活が続くなか、制限されてしまったことに目が行きがちになって、今を流れる日常を非日常と捉えるようになってしまっていた。狭い世界が息苦しい。何が正しくて、何が間違っているのか分からなくなり、脳が行き詰まる。それでも、あらゆるものに触れて、あらゆる景色を見て、何でもない時間を特別なものにしながら日々を重ねることで、豊さを得ることができるかもしれない。全てを肯定することは難しいけれど、全てを否定する必要もないのではないか。風の吹くまま季節を感じ、身に纏う布の素材に触れ、今を生きる肌を撫でる。そんなふうにして、毎日をオリジナルにしていけたら、未来がもっと充実したものになるはずだ。大野いとの自由な笑顔から、そんなメッセージを感じた。

 最後は、白のスウェットにデニムを合わせたラフなコーディネートで街を歩く。ここまで見てきた写真は全て夢だったのではないかと錯覚するほど、平凡で日常的な光景が広がっているが、手元には、一冊を通して触れた大野いとのぬくもりが、感触としてじんわり残っている。本作に大野いと自身の言葉は一切記されていないものの、写真から伝わる彼女の温度が何よりもの説得力を持って、その場その場の感情を記してくれている。何かと不安な情報に心が左右される昨今だけれど、確かなぬくもりを握りしめて、明日へと続く横断歩道を楽しい足取りで渡れば、きっと大丈夫。日常的な風景が、写真集から伝わるぬくもりを、ずっと先の未来まで運んでくれている。そのあまりのあたたかさに、日常のなかで見失いがちになっていた豊さに気づかされた気がする。

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■とり
日々グラビアに勇気と希望をもらって生きており、 グラビアを熱くドラマチックに語るのが趣味。 読んだ後に心が豊かになるような文章を心がけています。 好物はカレーとサーモンです。Twitternote

■書籍情報
大野いと写真集『mellow』
定価:3000円+税
出版社:blueprint

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