オーラル山中拓也が語る、初エッセイで伝えたかったこと「どんなクズでも這い上がれる」

オーラル山中拓也が語る、クズの生き方

人生が詰まった一冊


――本作で改めて人生を振り返ってみていかがでしたか?

山中:実はこれまでも、人生を振り返る作業は頻繁にやっていました。デビュー前、何万といるバンドマンのなかで頭ひとつ抜きん出るにはどうしたらいいか考えたとき、自分の人生を振り返らないとボーカリストとしての説得力が出ないという結論に至ったんですよ。自分に起きた出来事は全て今の自分を形成する要素なので、向き合いたくない過去も含めて、振り返らなければならないと思っていましたし、引き出しはたくさんありました。今回のエッセイ本を通して、引き出しをより細かく区分けして整理した感覚ですね。

――それこそ、売れるために必死に行動してきたことも、包み隠さず書かれていますね。

山中:音楽業界に関わらず、どの社会においても甘い話って絶対にないじゃないですか。僕は学生時代にヤンチャしていた時期もありますが、何も考えずにただ好きな音楽をやって、運よくここに辿り着いたわけではないので、そこはリアルに書きたかったんです。自分には才能がないって思うなら、人の何倍も考えて行動しないと道は開けないんですよ。僕は、売れることを目標に計画を立てて、それを実行してきたから今があるし、何事においても運や才能がなければ絶対に叶わないなんてことはないと思います。

――読者に響く部分だと思います。最後は新型コロナによる自粛期間のことも書かれていますが、やはり影響は大きかったんでしょうか。

山中:よくも悪くも、人間の汚い部分があぶり出された一年だったと感じましたね。今まで見えにくかったものが見えやすくなったということだと思うんですけど、その表に出ない実情を知る大切さを実感しました。そのなかで、生きている間に何をするべきなのか、音楽が人々にとってどんな存在であるべきか、改めて自分の人生や音楽に向き合うきっかけになりましたね。

――インプットの時間があったおかげで曲が作れたと、前向きなことも書かれていましたが、本作を読ませていただくと、ライブに対する思いが強い印象も受けました。ライブができないことに関してはどうですか?

山中:苦しかったですね。ライブができなくなることで、業界的な勢いが目に見えて下がりましたし。ただ、そこで文句を言って何もやらないのは性に合わないので、自分がワクワクすることを始めたり、ファンが楽しめる新しいエンターテインメントを考えたり、自分たちなりに全力を尽くして活動できたので、充実はしていました。昨年、緊急事態宣言が出された時点で、最悪2年はライブできないなと思って見ていたので、焦りはなかったです。まあ、これが4年、5年と続いたら、さすがに無理って思いますけどね(笑)。

――2年も先を見ていたのはさすがです。本作は過去から現在まで、山中さんの人生が詰まった一冊ですが、読者に感じてもらいたいことは何ですか?

山中:どんなクズでも這い上がれるんやでってことですかね。僕はずっと自分がクズだと思っていましたし、きっと世の中のほとんどの人が弱さを持って生きていると思います。でも、どれだけ弱い人間だったとしても、何かをきっかけに一生懸命努力ができたら、それがいちばんカッコいいですよね。ダサい生き方をしてきた僕でも、今ここにいて、お客さんの前でライブすることができている。クズでも這い上がれるっていうのは、僕の人生を持って証明できたことなので、読んでくださった方に勇気を与えられたら嬉しいです。

■書籍情報
『他がままに生かされて』
山中拓也 著
定価:本体1,900円+税
出版社:KADOKAWA
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