『呪術廻戦』乙骨先輩の存在は物語にどう影響する? 虎杖悠仁との違いを考察

『呪術廻戦』乙骨憂太を考察

 本稿の冒頭で、私は、「なぜ乙骨憂太は虎杖悠仁に主役の座を明け渡さねばならなかったのか」を考察すると書いた。賢明なる読者諸兄はもうおわかりだろうが、要するに、「少年漫画」というものが「ひとりの少年の成長を描く物語」であるのだとすれば、「乙骨憂太の物語」はこの段階ですでに「完結」してしまった、ということだ。

 つまり、あらためて呪術高専を舞台にした「少年漫画」を描くにあたり、芥見下々は、これから成長していく余地のある新しい主人公(=虎杖悠仁)を、すでに成長してしまった少年(=乙骨憂太)とは別に立てる必要があった、ということである。

※ 再度注意。以下、『呪術廻戦』の最新話(第137話)について触れています(筆者)

 さて、いま本稿を書いている時点での『呪術廻戦』の最新話(第137話)では、これまで名前しか出てこなかった乙骨憂太が、ついにその姿を現す。残念ながら、彼の登場を首を長くして待っていた多くのファンにとっては、かなり気が滅入るような登場の仕方ではあるが、いずれにせよ、ひとつの物語にふたりの主人公は共存できるのか――その答えが、近々明らかになるだろう。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。Twittter

■書籍情報
『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』
芥見下々 著
定価:本体440円+税
出版社:集英社
公式サイト

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