『ONE PIECE』ルフィとドフラミンゴの勝敗を分けたのは? ドレスローザ編、複雑な物語を読み解く
尾田栄一郎の『ONE PIECE』(集英社)は「週刊少年ジャンプ」での連載が1997年から続き、97巻まで刊行されているファンタジー漫画だ。70~80巻にかけて展開されたドレスローザ編は、主人公のルフィたち麦わら海賊団とドンキホーテ海賊団の対決の背後で、ドレスローザ王国の興亡をめぐる人間ドラマが展開された長編エピソード。様々な勢力が入り乱れ、複雑な物語が長きに渡って展開されるドレスローザ編は、もっとも『ONE PIECE』らしい物語となっていた。
※以下、ネタバレあり。
ドレスローザ編は大きく分けると70~75巻(前半)と76~80巻(後半)の二部構成となっている。
政府公認の海賊・王下七武海の一人であるドンキホーテ・ドフラミンゴを倒すために、七武海のトラファルガー・ローと手を組んだルフィ達は、ドフラミンゴが支配するドレスローザ王国へと潜入。やがてルフィ達は、国民といっしょに暮らすオモチャたちが、実はドンキホーテ海賊団のシュガーが持つ「ホビホビの実」の能力によってオモチャに変えられた反逆者だったことを知る。一見平和な王国に見えたドレスローザを裏から支配する邪悪な権力によって、蹂躙される人々と、この国で暮らしている小人族(トンタッタ族)にルフィ達が手を貸し、オモチャに変えられた人々の呪いを、麦わら海賊団のウソップが解いたことで情勢は大きく変化。ルフィたちは人間に戻った反乱軍と手を組み、ドフラミンゴに戦いを挑む。
しかし、国民に本性を知られたドフラミンゴは「イトイトの実」の力で“鳥カゴ”を発動。触れたものを切断する鋭い糸の束で作られた檻がドレスローザ全体を覆い、国民を閉じ込めてしまう。糸は少しずつ範囲を狭めていき、このままでは国民全員が皆殺しにされてしまう。そんな状況を作り出したドフラミンゴは、おれを倒すか、おれに楯突くルフィたちに裁きを加えるか、どちらかを選べと言って、ルフィたちに億単位の懸賞金をかける。
つまり、鳥カゴによってドレスローザは、世界政府が海賊に賞金首を賭けて命を狙う『ONE PIECE』世界の縮図に変わってしまったのだ。
ドレスローザ編の後半で、ルフィが戦うドフラミンゴは、複雑な背景を持った悪役だ。ドフラミンゴは世界の頂点に立つ天竜人(世界貴族)だったが、父親が天竜人の地位を放棄し、地上に移住したことで人生が大きく変化。天竜人に対して恨みを持つ人間たちから迫害を受け、追われる身となったドフラミンゴは、後にドンキホーテ海賊団の幹部となるトレーポルたちと出会い、「イトイトの実」と拳銃を与えられる。
その後、父を殺し、その首を差し出すことで、天竜人の故郷「マリージア」に帰ろうとするが、逆に命を狙われることとなり、ドンキホーテ海賊団を結成。やがて七武海の一人となり、ドレスローザ王国を奪い取る。その一方で、ジョーカーと名乗り、人工悪魔の実「SMILE」や武器を新世界の海賊たちに売る闇ブローカーとしても暗躍する。
そんなドフラミンゴは「悪のカリスマ」と呼ばれ、恐れられているが、仲間に対する愛情は深く、失敗を咎めず仲間たちをファミリーと呼ぶ優しい一面もある(しかし、裏切り者は容赦なく殺す)。その意味で悪役ではあるが、とても魅力的なキャラクターである。
ドフラミンゴは、海賊の幹部連中からは、ドフィと呼ばれている。音の響きがルフィと似ているが、これはおそらく意図的なものだ。仲間を大切にするという面において、ルフィとドフラミンゴは似ている。