老犬介護や看取り拒否……殺処分ゼロの裏側にある『老犬たちの涙』

看取るのが辛いから殺処分『老犬の涙』

飼い主批判だけで終わらせず「未来」を考えよう

 飼い主がペットの命に責任を持つことはもちろん大切だが、老いた動物を行政施設に持ち込む人を批判するだけでは悲しい殺処分はなくせない。この先、ペットの長寿化はますます進んでいくからこそ、責任を問うだけでなく、行き場をなくした動物が命の期限に怯えずに暮らせる“終の住処”をどう作っていくかも考えていきたい。

 「かわいい」ばかりが取り上げられ、介護問題に光が当たりにくいペット業界の現状を変えたり、老犬ホームや老猫ホームが少ない状況を見つめ直したりしていくことも殺処分という言葉をなくすためには大切だ。

 近年は人間と動物の老々介護が問題視されているが、いま健康であっても自分の身がいつどうなるか分からないのは高齢者以外にも言えること。自分に不幸があり、ペットが親しい人から飼育拒否されて行き場を失ってしまったとしても、安心して暮らせる場所があってほしい。そうした居場所作りが、これから先の社会には求められていくと思う。

 老いた動物に優しい未来は、まだまだ遠い。しかし、1人でも多くの人が年老いた動物たちの現状を知り、ペットの老いや死から目を背けない強さを持っていけたら社会の形は少しずつ変わっていくはず。そのためにも本書で、老犬の命と心を守り、救うためにできることを学んでみてほしい。

 すべての年老いた動物が家族に看取られ、心穏やかに旅立てる未来を少しずつ実現していくこと。それが、これまで犠牲にしてきた子に私たちができる精一杯の謝罪だ。

■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。

■書籍情報
『老犬たちの涙  “いのち”と“こころ”を守る14の方法』
著者:児玉小枝
出版社:KADOKAWA
定価:本体1,250円+税
https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000044/

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