『ONE PIECE』サンジは“頭脳派の参謀”へ 騎士道精神あふれる男の真価に迫る

『ONE PIECE』サンジは“頭脳派の参謀”へ

 “闘うコックさん”から、いつしか麦わらの一味において“参謀”的な役割を担うようになったサンジ。もとより、麦わらの一味にとっては料理人として欠かせぬ存在であり、彼の繰り出す自慢の脚技は強力で、戦闘員としても重要であったのはご存知の通りだ。

2012年に刊行されたレシピ本『サンジの満腹ごはん』も話題に。2020年7月には通常版も発売された。

 そんなサンジが麦わらの一味に加入したのは、単行本8巻の第68話でのこと。東の海にある海上レストラン・バラティエにて、クリーク海賊団との戦闘後だ。マンガはもちろん読んでいたが、アニメ版でこのシーンが放映された当時の筆者は小学生。サンジが大恩人であるゼフに向けた「……長い間!!! くそお世話になりました!!!」というセリフには、子どもながらに胸を熱くしたものであった。彼の口癖である語頭に「クソ」をつけるのなども、よくマネしたものである。

 腹が減っている者を前にすれば、たとえ敵であろうとも情けをかける慈悲深い一面も持つサンジ。こういったところもまた、まさに“カッコイイ兄貴”のようで、彼に慈悲をかけられる登場人物たちさながらに憧れたものである。だが同時に、料理人としてのプライドを傷つけられたときや、仲間たちが危機にさらされている状況など、怒りに身を任せてしまうとどんな危険にも身を投じてしまうという弱点もあった。恩人・ゼフが自らの足を犠牲にしてまで幼き日のサンジを救ったように、彼には“自己犠牲の精神”を感じる。

 だが、それが顕著であったのは、首領クリーク率いるギンやパールらと一戦交えた「バラティエ編」や、魚人・アーロンによって海に落とされたルフィを救うために水中戦に挑んだ「アーロンパーク編」など、一味加入初期の頃だけのことのように思う(前者ではまだ加入していないが、共闘している)。もちろん、必殺技・悪魔風脚(ディアブルジャンブ)などが“怒り”の念から生まれたように現在進行形でもその性質は見られるが、冒険の過程で成長し、より冷静な判断をできるようにもなったのではないだろうか。そう、いつしか一味の参謀的な役割を務めるようになり、頭脳派の一面を垣間見せるようになったのだ。いや、そもそも読者である我々が冷静になって麦わらの一味の面々を眺めてみれば、いくつかの難点を除けばサンジが最も常識人なのである。

 彼が早くも参謀的な役割を果たしたのが、ルフィたちがMr.3&ミス・ゴールデンウィーク、Mr.5&ミス・バレンタインらに追い詰められた「リトルガーデン編」のことなのではないかと思う。たまたまサンジは後の宿敵となるMr.0(クロコダイル)からの連絡を受け、機転を利かせてMr.3を装うことで、目的の地・アラバスタへのチケットを手に入れたのだ。ここでは一同の闘いに参戦しなかったサンジだが、彼のこの活躍は「アラバスタ編」でも活きてくることとなった。そしてその参謀ポジションがより研ぎ澄まされたのが、「エニエス・ロビー編」だろう。ここで彼は、仲間であると信じていたロビンが世界政府に囚われの身であると感づき(その真相を知るのは後でのことだが)、単身救出に向う姿には多くの方がしびれたはずである。

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