清水尋也が語る、“FLOATING”する自由と責任 「選んだ道を後悔しないで生きる」 

清水尋也、1st写真集『FLOATING』を語る

 『渇き。』『ソロモンの偽証』『ちはやふる』と話題の映画に相次いで出演し、ドラマ『anone』では、第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞新人賞を受賞。2019年には映画『貞子』、『パラレルワールド・ラブストーリー』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』の好演が評価され第11回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞を受賞。今年は『青くて痛くて脆い』『妖怪人間ベラ』『甘いお酒でうがい』と出演映画の公開が続々と控える実力派若手俳優・清水尋也が初となる写真集『FLOATING』を発売した。

 同作に収められた写真は、清水が留学先に選んだロサンゼルスで全編撮影された。留学中に書いた日記、そして20年の人生を振り返るインタビューと共に、素の清水を覗き見ることができる贅沢な1冊だ。リアルサウンドブックでは、同作について清水にインタビューを実施。撮影時の話、留学中に変わったという人生観について、さらに誕生日に行われたネットサイン会についても訊いた。(編集部)

留学中のありのままの姿を写してほしい

――「まさか自分が写真集を出すなんて」と、思われていたそうですね。

清水:自分の写真集が出ることについての感想は……驚きと同時に、なんだかおもしろかったですね(笑)。家族も笑っていて、母親が「息子が写真集を出すなんて、ほんとウケるよね」と言うから、「それな」みたいな(笑)。でも、作品を観てすごく喜んでいましたね。ふだんから応援してくれているし、「ファンの方が喜んでくれる、いい写真集だと思う」と言ってくれて、ありがたいですね。

――ご自身は写真集をご覧になっていかがですか?

清水:自分の顔ばかり写ってるなぁ、と思います(笑)。当たり前なんですけど(笑)。でも、今しかない20歳、しかも貴重な留学期間を写真に残せたことは財産にもなるし、人生において良い経験になりました。

――写真集が店頭に並んでいる様子は、ご覧になりましたか?

清水:まだ実際は見られていないです。ちょっと怖いんですよ……自分の写真集だけ売れ残って山積みになっていたら、どうしようって(笑)。

――お気に入りの写真はありますか?

清水:ビーチの写真がすごく好きですね。ロサンゼルス感があって、夕焼けのグラデーションと、奥行きと。構図的にも、写真としてすごく素敵だなと思っています。

――撮影前に“こんな写真集にしたい”との思いはありましたか?

清水:事前に打合せもさせて頂いて、留学中のありのままの姿を写そうと、ドキュメンタリーっぽい写真集にしたいねと皆で意見が一致しました。

――イメージ通りの作品になった?

清水:100%“素”だと思います。撮られてるっていう意識がなかったんですよね。「どこで撮ろうか~?」と言いながら車を走らせて、「あそこら辺いいじゃん」と車を降りて撮影するような感じで。カメラマンの赤木(雄一)さんと会話していたり、ご飯を食べていたり……本当に素でしたね。

留学で人生が“変わった”

――留学から少し時間が経ちましたが、振り返ってみていかがですか?

清水:一生、忘れないと思います。宝物ですね。1カ月以上親元を離れるのも初めてでしたし、色々な人に会って、いろんな価値観を共有して、ガラッと人生が変わったと思います。留学先でできた友達とは今でも連絡取り合っているし、一生つるんでいるんだろうなと。本当に一秒一秒が、僕の人生において重要なものになったと思います。

――具体的に、どんな風に人生観が変わった?

清水:変な気負いがなくなりました。日本にいると“芸能人”というフィルターをかけられるけど、僕は“芸能人”という言葉が好きではないんです。“公務員”とかと同じように、本来はカテゴリーの区切りでしかない言葉なのに、「芸能人だから」とか「芸能人なのに」と言われることにずっとハテナがあって。でも、ロサンゼルスでは「何やってるの?」と聞かれて「アクターだよ」と答えても「へぇ~、がんばれよ」みたいに、すごくフラットなんですよ。

 学校には警察官もいたし、タトゥーアーティストもいたし、フォロワーが300万人いる韓国の俳優もいました。でも、みんな同じ人間だし、すべてを取っ払っていいと思えたので、肩の荷が下りたというか。

――日本に帰れば状況は変わらないわけですが、それでも“生きやすくなった”と。

清水:そうですね。これまでは、自分自身がそれを意識していたところもあって。もちろん節度のある生活を心がけていますけど、過度な色眼鏡によって生まれる偏見みたいなものは、一切気にならなくなりました。僕は、僕の人生を楽しく生きる。役者である前にひとりの人間なので、人として充実していないと、仕事に精は出せない。楽しく生きることが、芸の肥やしにもなると思っています。お金を稼ぐためだけなら、ほかにも色々方法はあるんですよね。それじゃあ、なんで役者をやっているのかと考えた時、「お金ではないところに理由があるからだ」と、ロサンゼルスでふと思って。圧が抜けた気がして、そこから楽になりました。

――役者を続けている理由が気になります。

清水:今、やりたいからやっているだけですね。今はこの仕事がしたいので、良いお芝居を届けようと、毎作品とにかく全力でやっています。この先も、「やりたい」と思うだろうとは思っているけど、マネージャーさんには「やりたいことが変わったら辞めます」と言っています(笑)。

 ひとつのことをやり遂げるのは大事だし、素敵なことだけど、新しくやりたいことが出てくる可能性はゼロではないし、否定もしたくない。僕は、その時々の感受性に従いたいんです。“今日を幸せに生きる”を積み重ねていけば、10年後もきっと幸せに生きていけると思っているし、それが僕の理想。人生にセーブはないので、毎日毎日をいかに満足して生きていくかしかないじゃないですか。

――まさに“FLOATING”ですね。

清水:もちろん“10年後までに全国ロードショー作品の主演”とか、目標を立てるのはいいと思います。でも、それを決めちゃうと、5年後までにこうしないといけないから、3年後までにこうしないといけなくて、そのためには半年後までにこうしないといけないって、自然とプロセスが決まっちゃうんですよね。そうなると、自分がこの先歩む道が見えてしまうので、おもしろくないなと思っていて。計画性はないし、安定もないけど、目の前にある選択肢のどちらが魅力的かを考える。そして、選んだ道を後悔しないで生きることが責任だと思うんです。

 たとえば、僕は中高一貫の学校を受験したのですが、『アウトサイダー』(2018年/Netflix)に出演するには出席日数が足りなくて、学業を選ぶか作品を選ぶかの選択に迫られたことがあったんです。結果、『アウトサイダー』をとって、高校は転校をしたのですが、その時に後ろめたさはあったけど、それに押しつぶされたら“『アウトサイダー』(2018年/Netflix)に出ること”を選択した意味がなくなってしまう。僕には『アウトサイダー』で何かを得て、次につなげて、後悔しないようにしないといけないという責任がありました。結局、高校の友達とは今でも仲が良いし、先生も僕のことを応援してくれているし、学校を転校して良かったなと思っています。結果はそのとき次第だけど、悔いなく選択すれば、結果にも絶対に悔いはないはずだから。

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