中国SF文学『三体II』はなぜブームとなったのか 文芸書週間ランキング

中国SF文学『三体』ブーム、なぜ?

週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(7月7日トーハン調べ)
1位 『気がつけば、終着駅』 佐藤愛子 中央公論新社
2位 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ 新潮社
3位 『流浪の月』 凪良ゆう 東京創元社
4位 『きたきた捕物帖』 宮部みゆき PHP研究所
5位 『心霊探偵八雲(12) 魂の深淵』 神永 学 KADOKAWA
6位 『冒険者をクビになったので、錬金術師として出直します! 辺境開拓?よし、俺に任せとけ!(4)』 佐々木さざめき 双葉社
7位 『美女ステイホーム』 林真理子 マガジンハウス
8位 『三体II 黒暗森林(上)』 劉 慈欣/著、大森 望、立原透耶、上原かおり、泊 功/訳 早川書房
9位 『クスノキの番人』 東野圭吾 実業之日本社
10位 『三体II 黒暗森林(下)』 劉 慈欣/著 大森 望、立原透耶、上原かおり、泊 功/訳早川書房

 7月の文芸書ランキング、注目はなんといっても8位と10位にランクインした『三体II』だろう。昨年7月に刊行された第1巻は、バラク・オバマ前米国合衆国大統領や、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏らも夢中になったという触れ込みで日本に上陸するやいなや、発売後1週間を待たずに、10刷。累計8万6千部を達成したベストセラー作品だ(ちなみに全世界では、昨年9月の段階で2900万部を売り上げている)。続編を待ち望む声も多く、このたび刊行された『II』は、上下巻ともに初版は6万部。発売4日目に重版が決まり、累計発行部数は14万部となった。

 本が売れなくなったといわれるこの時代に、約2,000円もする海外SFがなぜこれほどのブームを巻き起こしたのか。詳細については、訳者のひとり・大森望氏を筆頭にさまざまな論者がインタビューに答えているのでそちらを読んでいただきたいが、驚嘆し夢中になった読者の声をきくと共通しているのは「全部入っている」ということ。

 世界的物理学者たちが立て続けに自殺している謎を、主人公のひとりである男性科学者が学術団体に潜入して探るスパイミステリー、かと思いきや、「三体」と呼ばれる奇妙なVRゲームに出会ったのをきっかけに、宇宙人からの侵略という壮大な物語へと展開していく。

 専門家顔負けの歴史や科学の知識を下敷きに、過去と現在を交錯させながら、ラブストーリー要素をはじめ、ありとあらゆるエンタメ要素を詰め込んで描かれる究極の“物語”なのだ。大風呂敷を広げることをおそれない「ものすごいハッタリ」が『三体』の魅力であり、SFファン以外の読者も惹きつけている理由だと前述の大森氏は述べている。

 「なんか難しそう」「読みきれる自信がない」と思っている人のなかにも、『スター・ウォーズ』や『ONE PIECE』は全作観て(読んで)、伏線もつながりも細かくチェックしています!という人はいるだろう。物語のおもしろさにジャンルの境界はない。現実を忘れてなにかに夢中になりたい、という人はこれを機会にぜひ手にとってみてほしい。

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