中国の監視技術によるコロナ対策、アジアに広がる背景とは? 梶谷懐氏と高口康太氏に聞く
経済政策においても、スマホを活用した技術が用いられていると、高口氏は続ける。
「日本では国民一人あたり一律10万円を支給することになりましたが、マイナンバーカードがないとインターネットでの申請ができず、ハガキを返送しなければいけません。一方の中国では、AlipayやWeChat Payなどでクーポンを配っています。武漢市では約6億元(90億円)ほど、市民にクーポンが配られました。IT企業が早い者勝ちのような形で配ったので、政策として正しいとは言い難いところもありますが、スマホと個人情報がきちんと紐づいている中国だからこその迅速な対応だったとは言えるでしょう」
一方、梶谷氏は、中国の中央政府による経済政策が効率重視であることに懸念も抱いているという。
「政府は金融市場や5Gのような新しいインフラに多額の資金を投じると言われています。中小企業は融資で難をしのぎ、失業者は新しい事業で雇われれば良しとする、市場原理で問題を解決する効率重視の経済政策といえるでしょう。欧米や日本のような個別の補償はほとんど行われていませんが、労働者の流動性が高い中国だからこそ成り立つやり方だと思います」
良くも悪くも、中国はまだまだ大きく変化していきそうだ。先んじて新型コロナウイルスを経験している国家だけに、その動向はあらゆる側面から引き続き、注視する必要があるだろう。
■書籍情報
『幸福な監視国家・中国』
著者:梶谷 懐/高口康太
発売日:2019年08月10日
価格:850円+税
頁数:256頁
NHK出版