アルコール、ギャンブル、散財……完治なき病“依存症”と向き合うために 『だらしない夫じゃなくて依存症でした』が描く真実
誰しも人にはやめられないことのひとつやふたつはあるはずだ。タバコやエナジードリンク、リストカットや爪噛みがやめられない人もいるだろう。もっと些細なことで言えば夜更かしや散財など自覚せずとも依存していることはたくさんある。それらをやめると決めた途端、無意識に続けていたものにどれほど依存していたかが初めてわかる。依存対象がなくなったことで、そこに埋まらない穴や発散できないストレスが発生してくる。それがアルコールや薬物、ギャンブルといった依存性の高いものであるとき、やめることは本人だけではさらに困難になる。
断酒したことで、酒に酔っていた自分がユリに対し、どれだけひどいことをしてきたかを実感させられたショウ。病気とはいえユリを傷つけてきた過去を直視できず、苦しむショウは治療の一貫として自助グループに参加する。自助グループとは依存症当事者同士や家族同士が集まり、病気についての話をしたり聞いたりするための集団で、各依存対象ごとに複数の団体が存在している。ショウは、同じ病気を持つ人たちの凄まじい経験談を聞き、ありのままの自分を話すことで、自分ひとりではないことに気づく。
つまり自助グループに通うことが、「やめ続ける」ことの継続につながる。たったそれだけかと思われる人と人とのつながりが、いかに治療において重要であるかを今作品は語っている。
依存症は、一度なってしまえば元には戻れない恐ろしい病気である。ただ、今作品は絶望を描くのではなく、回復の道が精一杯描かれている。依存症という病気を正しく厳しく、そして希望をもって知ることができる稀有な作品である。お酒を飲む人、パチンコをする人、その周囲にいる人、社会に生きる人すべてに読んでもらいたい。
■書籍情報
『だらしない夫じゃなくて依存症でした』
著者:三森みさ
監修:今成知美/島内理恵/田中紀子/松井由美/松本俊彦/村瀬華子
出版社:株式会社 時事通信出版局
定価:本体1,300円+税
<発売中>
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