50巻越えても終わらない漫画、なぜ増えた? 連載の長期化問題を考える

終わらない長編漫画の問題を考える

長編漫画はスマホ時代に向いているのか?

 たとえば、永井豪の『デビルマン』は、全5巻(講談社コミックス版)であれほどの壮大な物語を展開させることができた。また、同じく壮大な手塚治虫の『火の鳥』の各編にいたっては、(『乱世編』と『太陽編』を除いて)基本的に本1冊分でまとめられる長さだ。それを思えば、50巻だの100巻だのと続いていていまだに終わっていない漫画については、鳥嶋ならずとも「それで完結しない話って何なの?」といいたくもなる。もちろん、『デビルマン』や『火の鳥』の頃とは、コマ割りやスピード、テンポの面で、いまの漫画の作り方は大きく変わってきている。だから単純に「漫画は5巻もあれば充分」とまではいいきれないのだが、それでも、理想は全10巻〜20巻、長くても30巻くらいが、読み手にとって比較的手に取りやすい漫画の「尺」だとはいえるだろう。

 そもそも、スマホやタブレットで手軽に漫画を読む人が少なくない昨今、終わりの見えない大長編漫画は、現代的な読書のスタイルに向いているとはいいがたい。無論、読書というものは“慣れ”の部分が大きいから、この先、もしかしたら長時間、デジタルの画面を眺め続けても苦にならない世代が主流になることもあるかもしれない。だがそれまではやはり、いつまで経っても終わらない漫画よりも、適度な長さで完結する作品のほうが好まれるのは間違いないだろう。実際、ここ数ヵ月のあいだで話題になった漫画といえば、webで連載された全1巻の『マイ・ブロークン・マリコ』(平庫ワカ)や、最初から100話で終わるのがわかっていた『100日後に死ぬワニ』(きくちゆうき)であり、そうした傾向もまた、終わらない漫画に多くの読者が辟易していることを裏づけている、というのはいささか強引な“結論”だろうか。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi69

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