『ゴールデンカムイ』が描く、自然の美しさと脅威 バッタの大群に襲われる「飛蝗」の怖さ

『ゴールデンカムイ』が描く、自然の美しさと脅威 バッタの大群に襲われる「飛蝗」の怖さ

 『ゴールデンカムイ』237話にて(『週刊ヤングジャンプ』2020年20号)、新たな刺青人皮の情報に動揺する杉元と白石。情報の真偽は確認できぬままだが、船は止まることを知らない。

自然は時に強烈な勢いで襲い掛かってくる

『ヤングジャンプ No.20』

 終点の江別港はもうすぐそこ。事態がどうであれ、残りの刺青人皮4枚を手に入れなくてはならない。第七師団や土方一派より遅れを取り、杉元は焦りを感じているのだろう。決して穏やかな船旅ではないものの、大自然の中を進む蒸気船を魅力的に感じる読者は多いはず。自然と密接に関わる本作は、情景描写が丁寧に描かれているのも見どころだ。自然の中で狩りを、食事を、そして戦いが繰り広げられるが、作り物の大地ではないからこその迫力がある。

 だが登場人物達は、常にその自然の脅威と隣り合わせ。草木や生物は我々の心を癒してくれるが、時に強烈な勢いで襲い掛かってくることもある。舞台は気温の低い北海道ということもあり、恐ろしき現象が彼らを阻むケースも少なくない。

 まだ刺青人皮を求めて動き出したばかりの時に、杉元と白石は「ニプシ フム」の洗礼を受けることとなる。アイヌ語では「木が裂ける音」を意味し、急激な温度の低下によって樹木の水分が凍結。そして幹が破裂し、山の上からマイナス30度の寒気が襲い掛かるというものだ。

 結果的に助かったものの、二人にとっては苦い思い出だろう。低体温症に陥り、あと一歩間違えれば共倒れだったはずだ。北海道の山の厳しさを思い知るには、十分すぎる体験だったと言えよう。

屯田兵も苦しんだ現象・飛蝗(ひこう)

 そして読者の記憶に新しいのが、「飛蝗(ひこう)」。つい先日、中国でも夏ごろにこの現象が起こるのでは?と大きなニュースとなっていた。作中では釧路へ辿り着いた杉元一派が突然、バッタの大群に襲われる。たかがバッタ、されどバッタと言っても過言ではなく、衣服や農作物、家の障子までも食い荒らしてしまう厄介な虫なのだ。集団であれば海を越えられる距離を移動出来るらしい。当時は奴らの強襲がたびたび発生し、屯田兵が駆り出されることもあったのだとか。不死身の杉元もバッタには驚き、パニック状態となっていた。普段鋭い眼差しで戦いを繰り広げる人間とは、同一人物と思えないほどである。 

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