炎上騒ぎになった『100日後に死ぬワニ』、漫画作品としての真価は? 単行本を再読して感じた作者の実力

『100日後に死ぬワニ』作品の真価

「生きる」ということの意味

※以下、ネタバレ注意

 SNS上ですでに最終回を目にした人は多いと思うが、作者はあえて「100日目」をさまざまな解釈ができるように描いた。果たしてワニは死んだのか、死ななかったのか、リアルタイムで最終回を読み、そう疑問に思った人は少なくないだろう。そしてあの日、桜の花が舞い散る車道でいったい何が起きたのか。その答えがこの後日譚にあるのかといえば、残念ながらそんなことはない。むしろ見ようによっては、謎はさらに深まったとさえいえるだろう。ではその6ページは蛇足だったのかといえば、もちろんそんなことはなく、読者がいかなる解釈をしたとしても、きっとじん、とくるような味わい深いエピローグになっている。いずれにせよ、本書はコロナウイルス騒動で先行きが見えないいま、あらためて「生きる」ということの意味を真剣に考えさせてくれる1冊であるといっていいだろう。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi69

■書籍情報
『100日後に死ぬワニ』
きくちゆうき 著
価格:本体1000円+税
出版社:小学館
公式サイト

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