『ブルーピリオド』アートとスポ根の化学反応はなにを生む? 最新7巻で描かれる、八虎の新たな苦悩

『ブルーピリオド』最新7巻レビュー

呼び起こされるリアルな感情のざらつき、終わらない苦悩を追いかける

 スポ根の型に“創作することの苦しみ”をはめたらどうなるか? いまだかつて見たことのないこの切り口が、本作では特に際立った描写、作品の芯として描かれていると感じる。 いちどその世界に入ってしまったら一生背負って生きていかなければならない、業にも似た苦悩。緩急が重要なスポ根マンガにこのエモーショナルな感情が合わさると、『ブルーピリオド』という読み応えある作品が誕生する。

『ブルーピリオド』は、生々しい。リアルな感情を私たちに差し出してくる。私たちは彼らの感情をそのまま受け取り、同じように苦しみを分かち合う。その苦しみは、これからも続いていく。

 最新7巻では、目標としていた藝大に合格し新生活をスタートさせるも、大学で出会った人々や彼らの作品を目の当たりにして「自分は本当にここにいていいのか」という、新たな苦悩が八虎を襲う。芸大合格をゴールとしていた八虎は、そこが本当のゴールではないことに気づく。今まで経験したことのない新たな課題が、彼の前に立ちはだかるのだ。

 つまり、『ブルーピリオド』が描く苦悩は終わっていないし、ここから再び描き出されるということになる。そういう意味でも、この7巻は新章である第2幕のスタートであるといえるし、第2幕に突入しても本作の魅力がこの先も続いていくことへの証明といえよう。

■安藤エヌ
日本大学芸術学部文芸学科卒。文芸、音楽、映画など幅広いジャンルで執筆するライター。WEB編集を経て、現在は音楽情報メディアrockin’onなどへの寄稿を行っている。ライターのかたわら、自身での小説創作も手掛ける。

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