『呪術廻戦』はエンタメ漫画の最前線へ 最新10巻「渋谷事変」で描くリアルなバトルの興奮

エンタメ漫画の最前線『呪術廻戦』

 『週刊少年ジャンプ』で連載中の『呪術廻戦』(集英社)は芥見下々による呪術バトルアクション漫画。

 物語は、呪霊が跋扈する現代を舞台に、呪いの王と呼ばれた特級呪霊・両面宿儺(りょうめんすくな)の力を宿した少年・虎杖悠仁が伏黒恵たち呪術高専の仲間たちと共に呪術師として戦う姿を描いたもので、すでにアニメ化も決定している脂の乗った作品である。

※以下ネタバレあり

 この第10巻では、特級呪霊の真人と究極メカ丸と呼ばれる傀儡(呪術で動く人型ロボット)を操る呪術師・与幸吉の戦い「宵祭り」が前半(80~82話)で描かれ、後半(83~88話)は、真人たち呪霊軍団が虎杖の師匠・五条悟を倒すために起こした「渋谷事変」のはじまりが描かれた。

 与幸吉は、生まれながらに右腕と膝から下の肉体と腰から下の感覚がなく、月の明かりを浴びるだけで焼かれるほど肌は脆く、常に全身の毛穴から針で刺されたような痛みを感じるという特異体質の持ち主。その代償として巨大な術式と呪力を手に入れて、傀儡を遠隔操作して戦う力を持っていたのだが、身体を治すために内通者として呪術師たちの情報を真人たち呪霊と同盟関係にある呪詛師・夏油傑に流していた。

 引きこもっていた地下室から逃走し、真人の力「無為転変」で身体を治療する幸吉。しかし彼は、夏油傑も裏切り、京都高専の仲間たちと再会するために真人に戦いを挑む。

 与吉が操る究極メカ丸(絶対形態)は、ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する汎用人型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオンを思わせる造形で、変幻自在に姿を変える呪霊・真人 VS 巨大ロボット・メカ丸という壮大な戦いが展開された。

 全身包帯で登場した与吉の姿は『るろうに剣心』の悪役・志々雄真実を彷彿とさせるものがあったが、本作はこういった元ネタの組み合わせが絶妙である。

 「渋谷事変」に登場するバッタの呪いが呪霊化した蝗GUY(バッタが起こす災害・蝗害から来ている名前)の姿も、バッタの姿に寄せたリアルな仮面ライダーといった佇まいで、真人によって魂の形を変えられて怪物化した人間が“改造人間”と呼ばれていることを考えると絶妙な引用である。

 そもそも『呪術廻戦』は、冨樫義博の『幽遊白書』や『HUNTER×HUNTER』の影響が強い作品なのだが、まさに富樫がこういった元ネタの組み合わせがうまい作家であったため、その資質を継承していると言えるだろう。

 とは言え、単なる元ネタ遊びだけで終わらないのが本作の巧みさだ。それは、この10巻からは始まった「渋谷事変」のディテールを見ているとよくわかる。

 渋谷事変は、2018年10月31日の19時に東急百貨店 東急東横店を中心に半径およそ400mの帳(とばり)が降ろされたことから始まる。帳とは、限定された空間に呪術師や呪霊を閉じ込める結界のことで、この渋谷で張られた帳は、呪術を持たない一般人を閉じ込めるもので、その副次的効果として電波妨害も起こっていた。

 その日はハロウィンだったため、渋谷にコスプレした一般人が多数集まっていたのだが、呪霊たちは彼らを渋谷駅内部に閉じ込め、人質とすることで最強の呪術師・五条悟を呼び出そうとしていた。

 五条は渋谷ヒカリエShinQsB1Fから東京メトロ渋谷駅B5F副都心線ホームに降り立ち、線路で待ち構えていた特級呪霊たちと対峙する。人間を盾に襲いかかる呪霊たち。しかし五条は難なく呪霊を退ける。形勢は五条の圧倒的優位かと思われたが、そこに明治神宮駅からの電車で無数の改造人間を引き連れた真人が現れる。

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