kemio、東海オンエア、QuizKnock……ベストセラー続々のYouTuber本 決め手は書籍ならではの企画性?
「専門家YouTuber」の書籍に注目!
近年、「専門家」によるYouTubeチャンネルが人気だが、YouTuber本もそういった専門家にフォーカスしたものがヒットを生み出している。たとえば、元美容部員 和田さん。は百貨店の美容部員を経てYouTuberとなった異色の経歴をもち、プロの知識をわかり易く解説することで人気を博しているが、彼女が上梓した『メイクでなりたい私になる #自分映えメイク』(KADOKAWA)も本人のTwitterによると2度の増刷が決まった(10月24日時)という。
そして、『QuizKnockファンブック』(クラーケン)は、東大クイズ王の伊沢拓司が率いる知識集団・QuizKnockのオフィシャルブック第2弾。テレビのクイズ番組でもおなじみの伊沢氏だが、YouTubeチャンネルも先日登録者数100万人を突破。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのQuizKnockメンバーの素顔から、オフィスの図解、そして動画にメンバーがコメントで振り返る「平成全動画振り返り」や、はなおやでんがんを迎えた座談会など、ファンならマストバイな内容となっている。ちなみに学研ステイフルと共同制作したノートやルーズリーフ、付箋などの文房具も「親にねだれるYouTuberグッズ」として人気となっており、もはやQuizKnockの多大な影響力に唸らざるをえない。
最後に紹介したいのは、1GAME・てつの『パチスロ馬鹿が動画配信を始めたら再生回数が1億回を超えました』(ワニブックス)だ。パチンコ・パチスロ実践動画で人気を博しているグループ・1GAMEののリーダーである、てつ自身がどのようにしてYouTubeで勝ち上がってきたかを自己分析しながら振り返る内容となっている。遊び半分で始めたパチスロ動画チームが巨大化していく中、動画制作、営業、スタッフのマネジメントについてを詳細に語っている。「ダークナイト」のジョーカーを模した姿からは想像できないほど(だからこそ?)の冷静さ、そしてパチンコ・パチスロというジャンルへの危機感、そして愛を持ってチャンネルを運営していることが伺える好著。YouTuberだけでなく、「好きなこと」で会社を立ち上げたクリエイターには、一読をおすすめしたい「ビジネス書」だ。
今後も有名YouTuberの書籍は増えていくだろう。早くも12月には、そらちぃ(アバンティーズ)&てつや(東海オンエア)主演映画の写真集「映画『明日、キミのいない世界で』OFFICIAL PHOTO BOOK」(講談社)や、チャンネル登録者数約50万人のYouTuber・シイナナルミ初の書籍『自己肯定感低すぎて嫉妬してる時の自分マジで化け物みたい』(KADOKAWA)が発売される。
自己啓発書、ビジネス書、エッセイ、写真集etc……ジャンルは多岐にわたるものの、支持者数を当てにした安易な企画ではない、書籍ならではの企画、切り口が求められているように思う。安易な企画本に対しては、ファンは正直だ。僭越ながら「物申す」をさせてもらうと、YouTuber本の作り手には、安定した数字が予想できるからこそ、出版のプロとしてのスキルを生かした冒険をしてほしいのだ。
■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。8月6日に市川哲史氏との共著「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)を上梓。Twitter