綿矢りさが語る、女性同士の恋愛小説を書いた理由「文章はユニセックスに表現できる」

綿矢りさが語る、女性同士の恋愛小説を書いた理由「文章はユニセックスに表現できる」

「上手くいってほしいという願いを込めながら書きました」

――恋愛に対しても、考えの変化はありましたか? 

綿矢:片思いから書き始めるのは変わってないですね。でも、昔は片思いで諦めていたのが、だんだんしぶとく追いかけるようになりました(笑)。昔は淡い恋心、失恋みたいな小説が多かったんですけど、頑張り方が変わったという感じですかね。高校生のときは憧れの人とか、ミステリアスな人、片思いで王子様みたいな人という距離感で恋愛相手を書いていた気がします。年齢によって、相手に求めることも変わってきますし。小学生だと「足が速い」とか、大学生だと「あの人かっこいい」みたいな。30代になるとそれが職業になったり。

――綿矢さんはずっと恋愛の作品を発表し続けているので、同じ感覚で変わっている読者の方もいそうです。ずっと恋愛を書き続けている理由はなんですか?

綿矢:文章を書いているときの高揚や楽しさが、いちばんあります。私は人が書きたくて。人間の会話や気持ち、体とかもそうなんですけど。自分の中でこだわっているわけではなくて、それを表現していくとどうしても恋愛関係になる。というか、なってしまう。そういうのが好きみたいです。としか言いようがないですね。恋愛を通して、その人の人生の脆い部分が露になる瞬間が好きなんです。

――今回の作品は、同性同士の恋愛をしている方へのエールのようにも感じました。そういう意識はありましたか?

綿矢:私は本当に2人を応援していて、上手くいってほしいという願いを込めながら書きました。むしろ、正しいとか応援するとかではなくて、これだけ頑張って、うまくいかないのはおかしいと思っていました。歩んだ道は大変だったけど、それは状況だったりお互いの気持ちが見えなかったりもしたからで、それは普通の恋愛にも当てはまりますので。

――今までとは違う恋愛を書くにあたって、先ほど出てきた小説以外に、例えば映画やドラマなどで参考にしたものはありましたか?

綿矢:普段から映画はよく見るんですけど、同性愛がテーマの一つになっている映画は、昔から好きなので結構観ている方かと思います。『ムーンライト』が、もう本当に素敵な作品で……。小説冒頭の「青い日差しは肌を灼き」という文章は、あの映画を観てからの連想です。女性同士の恋愛でいうと『キャロル』も見ましたが、個人的には『アデル、ブルーは熱い色』の方が感動しましたね。台湾映画の『藍色夏恋』も素敵でした。そうした作品は大体、家でアマゾンプライムで見ました。映画館には3Dとか4Dみたいな、体感を求めていく感じで、もう遊園地感覚なんです。だから最近だと『アラジン』だったり、音響目当てで『ボへミアン・ラプソディー』も行きましたね。最近は小説だけではなく、映画にとても影響を受けています。

――そのように、たくさんの作品を見ている中で、近年の映画やドラマに感じることはありますか?

綿矢:国内のドラマでいうと、私が中学高校のときは野島伸司さんのドラマが流行っていて、恋愛に対してものすごくシリアスだったんですよね。私はそういうのがすごく好きだったんですけど、あのような作風は時代が生み出したものだったのかなと。特に最近の恋愛ものは、ナチュラルにニュートラルに描かれているものが多い印象なので、そんな時代の雰囲気と、私がかつて好きで今でも好きな激しい感情の恋愛ものの雰囲気を、上手くミックスして書けたらと思います。

「普段は映画のサントラを聴くことが多い」

――作品の中では音楽が、2人をつなぐ重要な役割を果たしています。それもザビア・クガートから小田和正まで幅広いジャンルに渡ります。

綿矢:ザビア・クガートはあれも映画からで、ウォン・カーウァイの『欲望の翼』で使われていていた曲です。小田和正は世代ではないんですけど、名曲だしそこは小ネタとして楽しんでもらえたらなと。

――特に小田和正は急に出てくるので、驚きました。男女の掛け合いの失恋の曲「Lucky」は誰の曲ですか?

綿矢:ジェイソン・ムラーズの曲ですね。これを書いているときは、作中に出てくる曲ばかり聴いていました。普段は映画のサントラを聴くことが多いです。ウォン・カーウァイのものとか、『ラスト・エンペラー』も大好きなんで、坂本龍一さんの作ったサントラを聴いています。

――ラインナップを聞いていると、インストの劇伴が多いですね。書く仕事をしていると、歌はない方がいいですか?

綿矢:確かに! 意識してなかったけど、その方がやりやすいのかもしれないです。歌詞がないものを仕事中に聴いて、歌詞のあるものを自由な時間に聴いていますね。あとはYou Tubeで聴いて、良かったものをダウンロードしています。

――次回作に関して、もう書きたい題材は決まっていますか?

綿矢:この作品を書いたときに、自分の中にある恋愛の物語は全て書き切ったと思っていたんですけど、時間が経ってくると、今回とはまた別の違う切り口で書けたらいいなという気持ちになってきていて。やっぱり、恋愛小説を書き続けたいという気持ちは変わらないですね。

(取材・文=佐々木康晴/写真=信岡麻美)

■綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。04年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。12年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。著書に『勝手に震えてろ』『手のひらの京』『意識のリボン』など。本書に出てくる楽曲などについては、『生のみ生のままで』特設サイトに詳しく掲載されている。

■書籍情報
『生のみ生のままで 上』
綿矢りさ 著
発売中
価格:本体1,300円+税
発行/発売:集英社

『生のみ生のままで 下』
綿矢りさ
発売中
価格:本体1,300円+税
発行/発売:集英社

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