UAが育んだ30年の土壌と夏至の夜に咲いた笑顔の花々 幸福感に満ち溢れたデビュー30周年ライブ

ライブはクライマックスへと向かっていく。UAは、この30年間の自分は深刻になった時もあったものの後悔はしていないと話したあと、上京当時からのパートナーである大石マネージャーに感謝の言葉を贈った(当の彼女はPA席で笑顔で頭を下げていた)。そして次の曲を「この30周年のアニバーサリーライブに、特別に仕上げてみました。<スーパーロイヤルミルクティー>!」と紹介。やはり電子音から突入した「ミルクティー」から「Love scene」、「2人」とメドレーのように連ねられた3曲は、まさしく甘く優しいソフトグルーヴ。観衆が、そのふくよかな歌と音の波に包まれていくかのようだった。

本編の最後を締めくくったのは「AUWA」と「TIDA」。高揚に突き進むところで鈴木はキーボードも操り、音に厚みを加えていく。その中でのUAの歌声は非常に生命力が高い。いくつもの声の重なりが生む恍惚感がひときわ気持ちよかった。
拍手の中で再登場したUAは、手に持つ花を客席に投げ込んだあとに「ありがとんかち!」と言って笑っている。アンコールの1曲目に持ってきたのは、この前日にリリースされたばかりの曲だった。
「13歳の息子に『たまには“ハッピー”っていう曲を歌ってよ』と言われて、そういうタイトルにしました」
「〈やんばい塩梅〉のところをみんなが歌ってください。〈やんばい〉は山形弁で“ちょうどいい”という意味なの。つまり、ちょうどいい塩梅だと言ってるのね。まあ“やばい”でもよかったんだけど(笑)」

「Happy」は、UAの伸びやかなボーカルと、リズミカルにしてイマジネーションあふれるサウンドが心に入り込んでくる楽曲。日本語と英語が混在する歌詞も特徴的で、そこに〈梅干し〉〈御御御付け〉など最近の彼女らしい食べ物が出てくるのも楽しい。ポップに突き抜けていて、それでいて自由である。数年前、UAはカナダの島で暮らす中で世界のヒットチャートに親しんでいるという話をしていたが、かと言って自身の音楽は、決してシーンのトレンドを追従するような方向には傾いていない。この「Happy」にしても、あくまで自分のフィルターを通過させた上でのポップネスに着地させている印象を受ける。
次にメンバー紹介があり、この時に鈴木がUAに花束を渡す。「ありがとうね」と言った彼女は、その流れのまま幸せについて、そして平和について話し、谷川俊太郎の詩について触れた。
「私が大好きな谷川俊太郎さんに、平和というものはここに咲いている美しい花ではなくて、その花を咲かせる土だという詩があります(『平和』)。平和って今この瞬間、これなんだよね。私にこうして歌を歌わせてくれて、本当にありがとう。音楽を愛する皆さんと、またどこかでお会いしたいです。心の土を育てていきましょうね」

アンコールのラストは、まずは代表曲の「情熱」から。UA自身のスキャットが客席との掛け合いとなり、そこから歌に入っていく流れは、今の彼女の音楽における肉体性と即興性のスリリングな結晶のようだ。そして「甘い運命」の幸福感が流れ出すような空間は、あまりに恍惚的で、素晴らしかった。
幸せな空気に覆われた観客の拍手に、UAはもう一度のアンコールで応えてくれた。「太陽手に月は心の両手に」はDJミックスのようなクラブサウンドに進化していて、現在の彼女においてはむしろフレッシュに響く。「サンキュー、愛してるよ!」、そしてまたも「ありがとんかち~!」と言って、UAはステージを去っていった。

笑顔の花が咲き続けた30周年ライブ。先ほどの話に寄せるのなら、この平和で幸せな空間は、今夜集まったお客さんたちが、そして何よりもUA自身が素敵な土を育んできたからこそ生まれたのだろう。30年の歩みを振り返りながら、明日も笑顔で、これからも“生”を楽しみながら、幸せに生きていきたい。そして、自由に、優しく――そんなふうに思わせてくれた、夏至の日の夜のUA。最高だった。
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■『UA 30th Anniversary Live』
2025年6月21日(土)日比谷公園音楽堂
セトリプレイリストはこちら:https://jvcmusic.lnk.to/UA_30thAnniversaryLive
<セットリスト>
1.HORIZON
2.お茶
3.微熱
4.スカートの砂
5.リズム
6.MOOD (新曲)
7.ALK (新曲)
8.愛を露に
9.電話をするよ
10.TORO
11.雲がちぎれる時
12.数え足りない夜の足音
13.ミルクティー〜Love scene〜2人
14.AUWA〜TIDA
en1.Happy
en2.情熱
en3.甘い運命
en4.太陽手に月は心の両手に























