Apes、『Get Underway』ツアーファイナルで示した新境地 殻をやぶって前へと進んでいく覚悟が見えた一夜に

Apes『Get Underway』ツアーファイナルレポ

 昨年12月にEP『GATEWAY』をリリースしたApesによるツアー『Get Underway』。仙台、名古屋での対バン、大阪でのワンマンと進んできたツアーは、3月27日に渋谷・WWWでファイナルを迎えた。『GATEWAY』はApesにとってメジャー2作目となるEPで、これまでの彼らとは明らかに違う、開けた場所へと足を踏み入れた1作。彼らはもともと素晴らしいメロディセンスを持ったバンドだが、それをより引き出した『GATEWAY』の曲たちはさらに遠くへ、さらに多くの人へと手を伸ばそうとしているApesの現在地を示す作品となった。そのモードがライブの場でどのように表現されるのか期待して足を運んだが、想像以上だった。『GATEWAY』――“入口”と題されたEPからさらに一歩踏み込んだ場所で、彼らは眩い音を鳴らし続けていた。

Apes(撮影=タカギユウスケ)

 ライブはサポートドラムとともに坂井玲音(Vo/Gt)がステージに登場し、静けさの中でギターの弦を鳴らす……という印象的なシーンからスタートした。続いてメンバーも姿を現し、坂井が「集まってくれてありがとうございます!」と挨拶したのを合図に『GATEWAY』のオープニングナンバーである「Farewell」が始まっていく。力強いリズムに乗せて「一緒に歌おう」と叫ぶ坂井。フロアのテンションもどんどん上がり、それに呼応するようにバンドの鳴らす音にも熱がこもる。自らテンションを高めるように何度も叫び声をあげ、「Get Underwayへようこそ!」という言葉を届ける坂井は、そのままの勢いで続く楽曲「Sing for you」へ突入していく。

Apes(撮影=タカギユウスケ)
坂井玲音(Vo/Gt)

 ギターを弾くアラユ(Gt)のアクションも、全身でベースを弾くような村尾ケイト(Ba)の姿も、楽曲にさらなるドライブをかける。グイグイと力いっぱいオーディエンスを巻き込んでいくようなスタートダッシュである。その後も「Hesitate」、「Where’s Youth」とアッパーチューンを畳みかけると、ドラムのビートに乗せて「WWW、調子はどうですか?」と坂井。上がった歓声に「やばい、俺が負けてるんで追いつけるように精一杯やります」と応えると「How are you?」に入っていった。

Apes(撮影=タカギユウスケ)
アラユ(Gt)
Apes(撮影=タカギユウスケ)
村尾ケイト(Ba)

 5曲を一気に駆け抜けたところで、坂井は今回のツアーを振り返りつつ、このWWWでのワンマンを「すごく楽しみにしていた」と笑顔を見せる。そして「このライブで、明日1日は頑張れるエネルギーをみんなに絶対に与えるので。みんなは明日のことは何も考えないで、頭を空っぽにして楽しんでください」とメッセージを届けると、「Progress」を奏でる。ずっしりとした手応えを感じるエモーショナルで、エネルギッシュなサウンドの上でぐんぐん飛翔していくような坂井のボーカル、そしてサポートメンバー含めた4人のサウンドがガシッと合わさり、塊のように響き渡る。サウンドだけ取り出せば思いっきりオルタナティブで“暗い”と言ってもいい楽曲だが、メロディと歌声が風景をがらりと塗り替えていくような、今のApesを体現するような楽曲だ。

Apes(撮影=タカギユウスケ)

 ここで「こんなにたくさんの人に、自分の書く曲を届けるとは想像していませんでした」とギターを奏でながら坂井が語り出す。「これからはもうちょっと大それたことを、自分が想像もしていないことを考えていきます」。そんな宣言とともにライブは後半戦へ。〈まだ誰も見たことない場所へ行こう〉と歌う「Imaginary Flight」が、その言葉を証明するようにでっかい風景を描き出すと、繊細なギターのアルペジオからこちらもビッグスケールのミディアムチューンへと発展していく「スイセン」へ。EPで聴いても感動的だったが、ライブで聴くとよりあたたかく、人間味があふれて聞こえてくる。

Apes(撮影=タカギユウスケ)

 そしてMCを経て、ここで披露されたのが新たなアレンジの「魔法はとけていた」だった。力強さとバンド感がグッと増したサウンドの上でキャッチーなギターリフが躍る。どんどん加速していくようなアウトロのセッションがフロアを弾ませる中、坂井は何度も声を上げてボルテージを高めていた。もうライブも終盤戦。「まだいける?」と軽快にロールする「ハイライト」を投下すると、拳を突き上げるフロアを前にアラユのギターソロも決まる。そこに鳴り響く重厚なリフ、グランジーなサウンドが最高にクールな楽曲「Reservoir Dogs」だ。EPの中でも個人的にとても好きな曲で、ライブでどんなふうに繰り出されるのか楽しみにしていたが、眩いストロボに照らされる中、かき鳴らされるサウンドと咆哮は圧倒的だった。厚みのあるサウンドと抑揚の効いた展開がドラマティックに感情を掻き立てる。

Apes(撮影=タカギユウスケ)

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