m-flo、新生“loves”が果たす音楽シーンでの役割 時代とともに広がるフィーチャリングの意義
m-floの“loves”が帰ったきたーーそんな吉報は、彼らと2000年代を共に過ごした人々にとって、春の訪れよりも心躍る青天の霹靂だったと思う。“loves”シリーズとは、m-floが2004年から2008年にかけて、様々なアーティストをフィーチャリングに迎え、コラボ楽曲を制作したプロジェクトである。彼らの楽曲が青春の1ページに刻まれている人もいるだろう。
そんな同プロジェクトは今年春より再始動。3月6日には第1弾シングルとして「tell me tell me」が配信リリースされた。同楽曲は、意中の相手の心情が“わからない”というテーマの下、“loves”アーティストとして向井太一、eill、Sik-Kの3名が参加している。
スタイリッシュな風貌の向井は、オルタナティブR&Bを中心とした楽曲を発表している、柔らかかつ湿度の高い歌声の持ち主。一方で、eillは、彼と同じR&Bシンガーながらも、K-POPなどをルーツに持ち、今年5月発表の新曲「FAKE LOVE/」では、BLACKPINKにも通ずる“ガールズクラッシュ”の力強い側面を押し出している。また、Sik-Kは韓国出身のメロウな楽曲を得意とするラッパー。JP THE WAVY「Just A Lil Bit (Feat. Sik-K)」参加時には、日本語・英語・韓国語を用いて、多言語を行き来するラップを披露していた。
これはm-floも語るところだが、向井らの音楽は既存のジャンル区分などには収まりきらない、まさに新世代の表現である。その無限大な可能性を最大限に活かし、「tell me tell me」の華やかなトラックは、進行に伴って様々な色調のサウンドが入り乱れ、瞬く間に違った展開に突入していくのだ。
実際に楽曲中盤では、Sik-KとVERBALによるリリカルとタイトを両立したラップパートにて、さっそく曲調に変化が。その後は、楽曲でも特に印象的な〈tell me tell me〉のフレーズを担当するeillが橋渡しとなり、m-floの作品には欠かせないLISAの歌声がスパイスに加わったところで、向井の開放感あるフックで大団円を迎える。全員が肩肘を張らずに、自分らしくのびのびとした表現を放ち、その才能がバラバラであることをむしろ楽しんでいるようだからこそ、楽曲を通じた独自なスタイルの調和が生まれているのだろう。