サカナクション、Galileo Galileiに続くか? FLiNR、Chevon、Goethe、KOHAKUら北海道バンドの躍進が熱い

「怪獣」(TVアニメ『チ。 ―地球の運動について―』オープニング曲)がヒット中のサカナクション、既存曲の再録アルバム『BLUE』が話題を集めているGalileo Galileiなど、00年代に登場した北海道出身のバンドが目覚ましい活躍を続けている。そして2025年、再び北海道のバンドシーンが活性化。高いポテンシャルを備えたニューカマーが次々と登場している。そこで今回、北海道出身の注目バンド4組を紹介したい。
First Love is Never Returned
“First Love is Never Returned”(初恋は二度と戻ってこない)。印象的な名前を持つこのバンドの最大のストロングポイントは、ボーカリスト・Ishidaの声そのものだ。
ニューヨークへのボーカル留学の経験(ハーレム地区でブラックミュージックを学んだという)を持つIshida。R&Bを中心とした洗練されたバンドサウンド、滑らかなラインを描くメロディに乗る彼の歌声は、透明感、ハスキーさ、解放感と内省的な手触りを同時に感じさせてくれる、きわめて際立った個性を備えている。リスナーの趣味嗜好に関係なく「いい声だな」と思わせる力があるのだ。
Ishida、Yuji(Ba)を中心にバンドを立ち上げたのは2018年。メンバーの脱退、コロナ禍を経て、現在の5人体制になった2023年からFirst Love is Never Returned(以下、FLiNR)の快進撃が始まった。楽曲「Twenty-Twenty」「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」のスマッシュヒットを経て、地元の大型フェス『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2023 in EZO』に出演。さらに昨年は『Spotify RADAR:Early Noise』への選出や、『VIVA LA ROCK 2024』に出演するなど、幅広いリスナーにアピールした。
カラフルな音楽性もFLiNRのポピュラリティにつながっている。ファンキーなギターカッティングとダンサブルなビートが共鳴する「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」、ジャズ、ソウルなどのテイストを取り入れたミディアムバラード「Twenty−Twenty」、80'sサウンドを現代的なポップミュージックに昇華した「Unlucky!!」。ネオソウルやシティポップの潮流、Y2K的なセンスを存分に活かした楽曲作りとサウンドメイクには、コアな音楽ファンから一般的なJ-POPユーザーまで幅広い層のリスナーを魅了する“広さ”が備わっている。その中心にあるのはもちろん、Ishidaのボーカル。一瞬で誰が歌っているかわかる記名性の高さと、どんな属性の人でも楽しませるポップネスが一つになった彼の歌声はまさに唯一無二だ。
3月26日には、今年最初の楽曲「挿入歌」がリリースされた。軽やかなピアノのフレーズから始まるこの曲は、壮大なメロディと起伏に富んだサウンドが印象的なミディアムバラードだ。
舞台は、出会いと別れが交差する春。〈リアルな世界に音楽は鳴らない〉というフレーズが示す通り、実際の生活はドラマティックなことは何も起こらず、地味に過ぎていく。でも、それぞれの人生のなかではかけがえのない出来事ばかりで、せめてこの曲が流れている間だけは、“僕”と“キミ”の物語にスポットを当てたいーー。「挿入歌」には、そんな強い願いが確かに宿っている。ストリングスのサポートをBIGMAMAの東出真緒が担当したこの曲は、間違いなく、FLiNRのさらなるブレイクのきっかけになるはずだ。
また5月28日に3rdミニアルバム『POP OUT! III』のリリースも決定。8月から9月にかけて大阪、東京、札幌を回る2度目のワンマンツアーも開催される。活動を本格化させたFLiNRの新たなアクションにぜひ注目してほしいと思う。
Chevon
歌ってみた動画を中心にソロ活動を行っていた谷絹茉優(Vo)とギタリストのktjm、ベーシストのオオノタツヤが出会い、コロナ禍真っ只中の2021年に結成された3ピースバンドChevon。結成直後から12カ月連続で楽曲を発表し、2022年からライブ活動をスタートさせた彼らは、2024年2月に1stアルバム『Chevon』をリリース。さらにワンマンツアー『冥冥』を開催し、全国のフェスやライブにも積極的に出演、瞬く間に認知度を上げた。香取慎吾とのコラボ曲「Circus Funk(feat.Chevon)」(ドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』主題歌/フジテレビ系)も、彼らの存在を広めた大きな要因だろう。
Chevonの軸になっているのは、谷絹のボーカル。ジェンダーレスな歌声、濃密で幅広い感情を映し出す表現力を合わせ持ったボーカリゼーションは、蔦谷好位置をはじめとするクリエイターからも高く評価されている。そしてジャンルレスな音楽性もこのバンドの大きな武器。フォーキーな手触りのミディアムバラード「ハルキゲニア」、R&B系のグルーヴが心地いい「愛の轍」、ファンク、ジャズ、サイケデリックが混ざり合う「冥冥」など、アルバム『Chevon』以降にリリースされた楽曲も、同じバンドとは思えないほど色彩豊か。5月末から始まるZeppワンマンツアー『DUA・RHYTHM』が全公演ソールドアウトし、Zepp Osaka Bayside、Zepp Haneda (TOKYO)での追加公演も発表されている。