TETORA×炙りなタウン、盟友ならではの熱いツーマン 女性限定ライブで叫んだ“カッコいい”を貫く理由

TETORA×炙りなタウン 対バンレポート

 TETORAと炙りなタウンのツーマンライブが、3月1日、東京・高田馬場CLUB PHASEで開催された。TETORA、炙りなタウンはそれぞれ大阪、岡山で生まれたロックバンドで、会場の高田馬場CLUB PHASEは2組の“東京のホーム”にあたる。今回のツーマンは、オープン24周年を迎えた高田馬場CLUB PHASEのアニバーサリー月間初日に開催されたもので、観客は女性限定という普段とは一味違うライブだった。

 盟友として、対バンを重ねながら切磋琢磨してきたTETORAと炙りなタウンは、4月12日よりスプリットツアー『クレイジー&リアル ツアー』をまわることが決定している。この日のツーマンはいわば前哨戦のようなもの。ここが基準値になるなんて、ツアーも相当ヤバそうだと思わせられるほど、熱量の高いツーマンだった。

TETORA「“好き”以上に、カッコいいって思われるライブがしたい」

 先攻はTETORA。いつものSEに反応した人たちが前へ押し寄せる光景からは、「TETORAからか!」という観客の喜びと驚きが伝わってきた。そして上野羽有音(Vo/Gt)の「高田馬場CLUB PHASE 24周年、周年一発目の音をTETORAから始めます! よろしくお願いします!」という開幕宣言、オープニングナンバー「レイリー」の分厚いロックサウンドに、観客は拳を上げて反応した。日常生活を上手く乗り切るため、人が纏う心の殻を一つずつ剥がし、リスナーの内面に直接語りかけるこの曲は、まごうことなき愛の歌。そのことを示すように、上野は〈私達だ〉と歌いながらフロア一帯をぐるっと指差した。

上野羽有音

 心臓のビート、うねるベース、歪むギター&ボーカルに心が高鳴る感覚が、この場にいる一人ひとりにとって宝物。それを目の前のロックバンドが受け止めてくれるなんて、とても幸せなこと。対して上野は、ライブハウスに足を運んだ観客に向けて「ここまで辿り着いてくれてありがとう。今日はとことんやろう」と伝えた。そして「贅沢病」へ。冒頭の弾き語りを終えたあと、上野が「思いっきりいける?」と投げかけるも、観客はまだ緊張気味なのか、拳は上がるも声は上がらない。その様子に上野が微笑んでいた理由はのちに明らかになるが、微笑みながらもう一度、「いけるか?」と尋ねると、今度はフロアから声が上がった。その後、バンドでの演奏を再開。ミユキ(Dr)のビートをきっかけに加速して「7月」へ、さらに間髪入れず「素直」へ……と曲数を重ねるうちに場の空気はだいぶ解れてきた。

ミユキ

 MCに入ると、上野が「男の子には『嫌われてしまっても別にいいや』って心のどこかで思いながら雑に行けたりもするんですけど、同性の女の子には『嫌われたくない』ってなぜか思っちゃって。最初、ガチガチになっちゃった」と明かした。そんなことをわざわざ言わなくてもライブはできるはずだが、ここで自分もみんなと同じように緊張していたのだと伝えるのが、上野羽有音という人間であり、TETORAというバンド。いつだって生身でステージに立っているから、観客は3人の音楽を信頼できる。上野は本心をさらけ出した上で、「我慢してかわいこぶったり、無理してサバサバしてみたり、この時間はみんなでそういうのやめてみよう。そうやって生きてくと後々しんどくなってくるから。お互い、ありのままの自分の感性を信じて。自分自身が一番ドギマギして帰ります。よろしくお願いします!」と改めて宣言。そんなMCのあとの「第二章」は、この春卒業を迎えた人たちへ贈られた。

いのり

 ミユキが金髪を振り乱しながら鳴らす強烈なビート、いのり(Ba)が笑みを浮かべながら紡ぐストイックなベースフレーズが曲間を繋ぎ、「バカ」「嘘ばっかり」と怒涛の連打が始まった。観客も感情を解放させながら楽しんでいて、この頃にはダイバーも続出。上野は、観客がなかなか集まらなかった時代から一つひとつ積み上げてきた実感とともに、女性限定ライブでもチケットを売り切ったことについて言及しつつ、観客やライブハウスに対する感謝の言葉を重ねていたが、途中で「だから……ああ、もう!」と多くを語るのをやめた。そのまま始まったのは「イーストヒルズ」。魂の歌だ。これを以ってTETORAは完全にゾーンに入った。しかもセットリスト的にはここからキラーチューンが続く絶好のタイミング。「イーストヒルズ」「言葉のレントゲン」の演奏中に上野が発した「24周年、売り切れ、それだけで終わらせたくない! スプリットツアーも始まるし、バチバチにやろう!」「戦ってる人のために戦え!」といった言葉は、対バンの炙りなタウンに向けられたものだろう。さらに、「TETORAはTETORAなりの、狼煙をあげてく!」という炙りなタウンの楽曲タイトルになぞらえた発言から、「10月」「産毛」「き」とショートチューンを連投。“私たちは勝ちに来たけど、どうする?”と言っているかのような、不敵な投げかけだ。

 上野は「女の子に“好き”って思われるような曲って溢れてる。私も好きな曲が山ほどある」と前置きしながら、「そんな中で私らは、それ以上にカッコいいって思われるライブがしたいし、そんなバンドをずっとずっとやりたかった」と語った。人に好かれようと誰かの顔色を伺うのではなく、自分の思うカッコいい姿を貫きたいということだろう。汗を光らせながらの笑顔には、今、確かにそういうバンドができているのだという充実感が滲んでいた。そして「もうドチャクチャに、無茶苦茶になってるところを見てほしい。ブサイクな顔してダサいライブしてんなって嬉しくなって、またライブハウスに来てほしい」とライブのクライマックスへ向かう。「本気で戦ってる人に歌います!」と届けられた「Loser for the future」は、ライブハウスでの勝ち負けにこだわるがゆえに、“負け”も幾度となく経験してきたTETORAのバンド人生から生まれた曲だ。ステージからフロアへ伸びる照明は朝日のよう。逆光に浮かぶ3人のシルエット、観客の掲げる無数の拳はとても美しかった。

 本来はこれで終了予定だったが、急遽2曲を追加し、時間いっぱいまでステージを使ってから、炙りなタウンにバトンを渡した。

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