Lucky Kilimanjaroがライブを通して見せた奇跡のような光景 多様な“繋がり”を肯定するバンドの精神性

ラッキリ、幕張メッセ公演を観て

 たくさんの色鮮やかで幸福な瞬間があったが、特にライブ中盤、「KIDS」が終わるとダイナミックなドラムとパーカッションが激しく響き、「Find you in the dark」が始まる、あの瞬間の鮮烈さと迸るエモーションが、個人的には強く記憶に焼き付いている。生きることの暗がりの中で、それでも希望を探す人間の歌。迷いを抱えて彷徨う人間の姿を描きながら、そのうえで、〈きっと大丈夫〉というフレーズが優しくこだまする歌だ。暗闇の中で未来を探し、駆け出す人。その目から零れる涙、頭の中に駆け巡るたくさんの温かな記憶……そんな景色が思い浮かぶ。

ラミ
ラミ
山浦聖司
山浦聖司

 「Find you in the dark」は昨年リリースされたEP『Dancers Friendly』に収録された楽曲だが、“身体を踊らせる”“心を踊らせる”というそれぞれのコンセプトを持ってリリースされた2作のEP『Dancers Friendly』と『Soul Friendly』の新曲群は、ライブを豊かに彩っていた。「I'm NOT Dead」から「Ran-Ran」の流れではチャーミングな盛り上がりが生まれ、「フロリアス」では“風呂の妖精”こと大瀧の柔らかく美しい歌声が響き、終盤で披露された「メロディライン」は優しい“居場所の歌”として、私たちの“今まで”を迎え入れ、そして私たちを“これから”に送り出した。今年に入ってサプライズリリースされた新曲「楽しい美味しいとりすぎてもいい」もアンコールで披露され、爆発的な盛り上がりを見せた。ラッキリらしいポジティビティに溢れた名曲だが、この曲には〈こまけぇことはまかせとけ〉という歌詞がある。「細かいことは気にするな」ではなく、〈こまけぇことはまかせとけ〉と歌うところが、とてもラッキリらしい。

Lucky Kilimanjaro

Lucky Kilimanjaro

 MCで熊木はフロアに集まった観客たちに「みなさんが大好きです。誇りに思います」と感謝を伝え、さらに「すごいことをしてんだなと思いました」と感慨深げに語っていた。彼は自分たちが成してきたことにもまた思いを馳せているようだった。「すごいことをしている」ーーそれは観ているこちらも感じたことだ。一切偉そうにせずに、食べたり休んだりすることを楽しそうに歌うバンドだから身近にも素朴にも感じるが、Lucky Kilimanjaroはすごいことを成し遂げてきたバンドだ。彼らは“ダンスミュージック”の在り方にも、“バンドミュージック”の在り方にも、新しい色調を加えた。そしてなにより、今この時代に、こんなにもゆるやかに、ナチュラルに、私たちが自分を愛し、他の誰かを想うことができる、そんな豊かな空間を生み出すバンドがいる。それはあまりに尊く奇跡のようなことなのだと、改めて実感したライブだった。

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