玉置浩二、小田和正、中島みゆき、稲葉浩志……衰え知らず、“本当に歌が上手い”キャリアアーティストの実力
唯一無二の表現力を持つ中島みゆき、今も尚進化し続ける稲葉浩志
「唯一無二の表現力を持ち、もはや歌手を超えた女優」との評価を得た中島みゆきは、どこか語りべのような歌い方が特徴的。中島は初期、フォークシンガーでありながらシャンソンと並び称されることも多かった。シャンソンと言えば、中世フランスの吟遊詩人を起源とし、歌唱法は様々あるが、主人公の人生の哀しみと歓びを演じるがごとく歌われることが多い。3rdシングル表題曲「こんばんは」は、セリフから始まり、尺八、ひずんだエレキギター、オルガンが奏でる哀愁たっぷりのサウンドが秀逸。また初のチャート1位を記録したシングルでもある「わかれうた」は、愛と別れの悲しみを歌っているのが印象的だ。また、加藤登紀子「この空を飛べたら」、研ナオコ「あばよ」、桜田淳子「しあわせ芝居」などの提供楽曲でも、どこかシャンソン的な哀愁を聴くことができる。
最初は小劇場で歌っているような印象だったものが、ステージが徐々に大きくなるにつれ、「空と君のあいだに」や「地上の星」「銀の龍の背に乗って」など、楽曲のテーマも歌声も壮大になっていく。彼女がライフワークとしていた『夜会』シリーズも、ライブやコンサートとは異なる“舞台”といった印象で、その回ごとに異なる物語が設定され、セリフを歌に換え主演女優として全うした。
3月3日に放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)に、スティーヴィー・サラスとのユニット・INABA/SALASとして出演する稲葉浩志は、「超人的な声量を持ち、歌声も全く衰えないまさにレジェンド」と専門家がコメント。ハスキーでパワフルなボーカルはオリジナリティにあふれ、聴けば誰もが「稲葉だ!」とわかるほどの存在感を放っている。B'zとして初のチャート1位を獲得したシングル曲「太陽のKomachi Angel」や「Easy Come, Easy Go!」の時代から、すでに“稲葉節”ができあがっており、B'zの代名詞である「ultra soul」が生まれる約10年前とは思えないほど。
今年1月にリリースされた「鞭」では、稲葉のボーカル本来の魅力はそのままに表現力や色気が倍増、独特な言葉のセンスにもより磨きがかかっている。ストイックなトレーニングを日々行っていることは有名で、かなりのハイトーンを今も歌えるのは、60歳になった現在も欠かさない努力の賜物だろう。また、昨年リリースされたソロアルバム『只者』では、シャウトを織り交ぜたハードロック的な歌い方とは異なる、繊細で哀愁漂わせるボーカルも聴かせていて聴き応えがある。稲葉浩志の歌声は、「衰えない」どころかますます研ぎ澄まされ、進化し続けているという印象だ。
歌の上手さを前提にしながらも、その上で個性や表現力は一朝一夕では身につかない。どんな人生を経て、どんな経験をしてきたかによっても変わるだろう。そこから生まれるのが、その人だけの“オリジナリティー”だ。長年第一線で活躍しているシンガーにはそれだけの深みがあるが、デビュー当時から変わらぬ光を持っているのも事実。動画共有サイトや音楽サブスクリプションによって膨大な音源を聴き比べることも容易な時代、デビュー当時から現在までの音源を聴いて、長年活躍するアーティストの歌の上手さを再発見し、変わらぬ光を見つけてほしい。
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