シーナ&ロケッツが日本のロックシーンにもたらした革新 野宮真貴が明かす、鮎川誠との共演秘話やシーナへの憧れ

シーナさんと鮎川さんはお似合いの最強のカップル

ーー野宮さんが鮎川さんやシーナさんと実際に知遇を得たのはいつ頃ですか?
野宮:ピチカート・ファイヴが『女王陛下のピチカート・ファイヴ –ON HER MAJESTY'S REQUEST–』をリリースした1989年。2代目ボーカリストの田島貴男さんがいた頃、私もボーカルとコーラスでピチカートに参加していたんですが、そのアルバムのリリース記念のINK STICK芝浦FACTORYのライブのゲストに鮎川さんが参加されたんです。そのとき初めて鮎川さんとシーナさんにお会いしたんですけど、私はファンすぎて緊張して何も喋れなかった(笑)。
ーーシーナ&ロケッツとピチカート・ファイヴに接点があったんですね。
野宮:小西康陽さんもシナロケが大好きでした。日本が誇るロックンロールバンドだと言って、DJでも「レモンティー」をよくかけていました。
ーー鮎川さんもロックンロールやパンクとそのルーツであるブルースやR&Bなどに精通し、深く掘り下げながら、自身の音楽を築き上げた方でした。
野宮:The Kinksの「You Really Got Me」とか、Ramonesの「My Boyfriend (IWanna Be Your Boyfriend) 」とか、シーナ&ロケッツのカバーを通して知ったという人は私も含めて多いと思うし、カバーのセンスも抜群でした。鮎川さんのそういう音楽へのリスペクトと愛情に裏打ちされたものが一貫してあったことがシーナ&ロケッツが長年多くのリスナーに敬愛された理由でもあったと思います。
ーーその後もシーナ&ロケッツは精力的に活動を継続。鮎川さんとシーナさんはロックのアイコニックな存在でもありました。
野宮:私が長年お付き合いのあったアートディレクターの信藤三雄さんも90年代にジャケットも手がけていたし、シナロケの魅力をよく理解されていましたね。アルファ時代以降はバンドらしいストレートなロックで時代を超えていったと思うんですけど、年齢を重ねてもシーナさんは革ジャンに超ミニスカートと真っ赤な口紅を貫いて、ライダースの鮎川さんと本当にお似合いの最強のカップルでした。シーナさんのお別れ会のとき、マナーには反するのかもしれないけど、シーナさんに敬意を表して私も赤い口紅で参列しました。
ーー野宮さんのロック魂が溢れるいいお話ですね。
野宮:私はニューウェイヴ全盛期にデビューして、ピチカート・ファイヴで90年代を過ごしましたが、自分の根っこにはやっぱりロックとニューウェイヴがあるんですよね。シーナ&ロケッツは時代や音楽のモードが変わってもずっとブレなかった。私がシーナさんのライブを最後に観たのはHYSTERIC GLAMOURが主宰したイベントだったんですが、「来てくれて嬉しい」と私にも気さくに声をかけてくれて。それが亡くなる2カ月くらい前でしたが、鮎川さんや娘さんたちと一緒にいるシーナさんの姿は愛らしくて素敵でした。できればステージでもご一緒したかったと思います。

ーー2019年には古希を迎えた鮎川誠さんのバースデーライブ『鮎川誠 生誕71年祭』に野宮さんは参加されましたね。
野宮:そうなんです。なぜかお声がけいただいて。とても光栄で嬉しかったのですが、鮎川さんに「真貴ちゃんは何が歌いたい?」と聞かれて、打ち合わせのときにシーナ&ロケッツの歌いたい曲を全部リストアップしていったら、「こんなにあると? 嬉しい」と博多弁で仰って。私なりにリスペクトを込めて、シーナさんが一番好きだったThe Ronettesに寄せたヘアスタイルで「ユー・メイ・ドリーム」と「ベイビー・メイビー」を歌ったんです。私が歌ったときもお客さんは温かく見守ってくださって、娘さんのLUCY MIRRORさんとのライブも披露され、鮎川さんがとても幸せそうだったことを思い出します。鮎川さんと同い年の信藤三雄さんもライブにいらして、記念の2ショットを撮ったり、古稀のプレゼントに贈ったパープルのキャップを気に入ってよく被っていらした。


ーー鮎川さんの出身地の福岡での古稀ライブはいかがでしたか?
野宮:ライブ会場の福岡市科学館サイエンスホールは鮎川さんの母校である九州大学の跡地にできたホールだったんです。ヘビースモーカーの鮎川さんは喫煙場所が遠くなってしまったことを嘆いていましたが(笑)、皆で鮎川さん行きつけのうどん屋さんに行ったり、すごく楽しい遠征でした。娘さんたちが私を推してくれたおかげで、鮎川さんのギターの隣で歌う貴重な経験ができたことは忘れられないですね。最初にリハーサルをしたときの鮎川さんの言葉は、「おいのギター、うるさかろ?」でした。シーナさんは鮎川さんに寄り添いながらあの爆音ギターのなかでずっと歌い続けていらしたんだなと感慨深かった。
ーーそれはステージに一緒に立って、歌ってみないと分からないことですよね。
野宮:そうですね。シーナさんがどれだけパワフルにステージで歌っていたか、改めて実感しました。シーナさんの遺志を引き継いで亡くなる直前までライブを続けた鮎川さんはシーナさんとともに生涯をロックにささげた方でしたね。その美しさと尊さは永遠ですよね。近寄りがたいほどの存在感なのに、お話すると優しくて、感じがよくて、純粋なロック少年とロック少女がそのまま大人になったようでした。ロック少女だった私もシーナ&ロケッツの素敵なロックを歌い継いでいきたいと思います。
ーー3月にビルボードライブで開催される『野宮真貴 Birthday Live 2025 ~ニュー・ウェイヴを歌う~』が楽しみですね。
野宮:今年は立花ハジメさんをゲストにお迎えして、ニューウェイヴをテーマにしたステージを考えているんですが、ハジメさんとも親交があったシーナ&ロケッツのナンバーも歌うつもりです。東京公演のゲストの小山田圭吾くんも鮎川さんのギターが大好きですし、バースデーライブは自分のやりたいことを思いきりやってみたいと思って。長い間歌い続けていると、かつて憧れた人たちと巡り会えたり、共演するチャンスが生まれたりするんですよね。シーナ&ロケッツと出会えたことに感謝しながら、日本のロック、ニューウェイヴが輝いていた頃の音楽をアップデイトしてお届けするので、ぜひライブにいらしてほしいですね。

■リリース情報(2025年最新リマスター)
シーナ&ロケッツ 2ndアルバム『真空パック』MHCL-31063
シーナ&ロケッツ 3rdアルバム『チャンネル・グー』MHCL-31064
シーナ&ロケッツ 4thアルバム『ピンナップ・ベイビー・ブルース』MHCL-31065
シーナ&ロケッツ『SHEENA AND THE ROKKETS』MHCL-31066
鮎川誠『クール・ソロ』MHCL-31067
シーナ『いつだってビューティフル』MHCL-31068
発売:2025年1月29日(水)
価格:全タイトル ¥2,750(税込)
発売:ソニー・ミュージックレーベルズ
詳細:https://www.110107.com/s/oto/page/sheena_and_the_rokkets
■野宮真貴 ライブ情報
『野宮真貴 Birthday Live 2025 ~ニュー・ウェイヴを歌う~』
2025年3月7日(金)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st]OPEN 16:30 / START 17:30
[2nd]OPEN 19:30 / START 20:30
2025年3月8日(土)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st]OPEN 15:00 / START 16:00
[2nd]OPEN 18:00 / START 19:00
詳細:https://www.billboard-live.com/tokyo/show?event_id=ev-20319
2025年3月14日(金)大阪府 Billboard Live OSAKA
[1st]OPEN 16:30 / START 17:30
[2nd]OPEN 19:30 / START 20:30
詳細:https://www.billboard-live.com/osaka/show?event_id=ev-20320
<出演者>
野宮真貴(Vo)/ 堀江博久(Key)/ 永井聖一(G)/ 白根賢一(Dr)/ 高桑圭(B)
ゲスト:立花ハジメ(東京・大阪公演)、小山田圭吾(東京公演のみ)
詳細:https://www.billboard-live.com/tokyo/show?event_id=ev-20319