jo0jiの真価、音楽シーンにおける揺るぎない“存在感”  『EIGHT-JAM』音楽プロ絶賛の背景を徹底解剖

 jo0ji『EIGHT-JAM』音楽プロ絶賛の背景を徹底解剖

 懐かしいのに誰にも似ていない。新しいのに親しみやすい。jo0ji(ジョージ・表記の「0」はゼロ)の声はプリズムだ。多面的で、見る角度によって輝きが変わる。寂しそうだったり、茶目っ気があったり、色っぽかったり、慈しむようだったり、不器用そうだったり......ひとつの声の中にいろんな性質(≒感情)が含まれているように思う。だから昨日と同じ歌を聴いても、いつの間にか違う表情に出会ったような気持ちになる。

 鳥取県出身、漁師の父を持つアーティスト・jo0ji。自身も地元の漁港で働きながら音楽活動を続けている。そうしたバックグラウンドも、この音楽の成り立ちと不可分だろう。作詞・作曲・編曲を自身で手掛ける彼のキャリアは、2021年にYouTube上に落ち込んでいる友人を元気づけるために作った「不屈に花」のデモをアップしたことで始まった。2023年9月には1st EP『475』を発表。現状唯一の複数曲をパッケージした作品である。

 2024年は1月の「ランタン」にはじまり、終わってみれば7つの新曲を発表するなど、精力的に作品をリリース。そのどれもが好評を得るなど、彼の知名度をグンと引き上げた飛躍の1年だった。11月に行った初のワンマンライブ『jo0ji 1st ONEMAN LIVE 漁火』(東京・渋谷WWW X、大阪・Yogibo META VALLEY)の盛況ぶりは、その勢いの決定打と言えるだろう。

 年が明けてから1月12日と19日に放送された『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)での企画、「プロが選ぶ年間マイベスト10曲」では、いしわたり淳治が1位に、蔦谷好位置が10位に「眼差し」を挙げるなど、彼の歌は練達の音楽プロデューサーたちをも唸らせている。「新たな流行を作っていくような、そんな予感をさせる」とは番組内での蔦谷好位置の発言だが、実際多くのリスナーたちがこの音楽から特異なものを嗅ぎ取っているはずだ。シーンで一際大きな期待を抱かせる新鋭という評価は、ほとんど揺るぎないものになっている。

 家で流れていたという吉田拓郎、中島みゆき、柳ジョージ、RCサクセションらをルーツに挙げるjo0jiの音楽は、やはりその根幹にフォークや歌謡曲、ロックンロールやブルースがあり、そして口ずさみたくなる(郷愁に誘うような)メロディがある。彼の楽曲が日に日にポピュラリティを獲得しているのは、そうした魅力的な声とメロディによるものーーだけではもちろんなく、その上でサウンドや歌詞に耳を惹きつけるフックと強度があるからだ。

jo0ji「眼差し」Music Video

 『475』にアレンジャーとして参加した江﨑文武(WONK)、井上幹(WONK)をはじめ、関口シンゴ(「ランタン」)やトオミヨウ(「ワークソング」)といった名うてのミュージシャンたちがjo0jiとの共同編曲を担当。それによって口ずさみたくなるような親しみやすいメロディが、胸躍るような現代的なサウンドと結合されている。いわば彼の音楽には鋭さと素朴さが同居しており、それがこの音楽の聴き応えに繋がっているのだ。たとえば『EIGHT-JAM』でフィーチャーされた「眼差し」も、井上幹が手がけた軽妙洒脱なアレンジによって、原曲が持つ歌の景色が広がっているのは間違いない。ストリングスと波の音を背にして歌い出す〈際限ないほどに、空が眩しい/反射して煌めく水面が綺麗〉というフレーズを聴けば、きっと誰もが蒼天の景色を眼に浮かべるだろう(ちなみに冒頭の汽笛の音を入れたのは江﨑文武とのこと。気の利いた工夫がこの曲のドラマ性を引き立てているように思う)。

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