南條愛乃は何のために音楽活動を続けるのか 10年かけて築き上げたファンとの相思相愛な関係性

南條愛乃、いま音楽を続ける理由

 2024年12月12日で、ソロアーティストとして12周年を迎える、南條愛乃。そんな南條の音楽活動をデビュー作『カタルモア』の頃から追いかけ続けてきた、筆者。もし彼女のインタビューを任された際には、“こんな質問をしたい”と数年来、温め続けてきたものがある。ーー南條愛乃がいま、音楽活動を続けている理由とは?

 幸運にも、南條がデビュー記念日にあたる12月12日、ライブ映像作品『南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories-』をリリースすることを機に、その願いが今回ついに叶うことに。前述の質問や、2023年12月に音楽活動10周年を記念して開催した同名のライブについて振り返るのはもちろん、バンドメンバーとのリハーサル時の裏話から、『カタルモア』制作当時の本音まで、この10年間を総括する話をたっぷりと聞くことができた。

 本文にて直接的な言及こそしていないものの、“親戚や近所にいそうな声優”として、ファンと親しみながら歩んでいきたいと語っていた、あの頃の南條。その想いにも変化はあったのだろうか? 南條愛乃の変わったところと、未だ変わらぬところーーそのどちらもが存分に引き出されるような質問を、夜鍋してこさえたつもりである。(一条皓太)

この10年間、アルバム制作を頑張ってきたんだな

LIVE Blu-ray「南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories-」Digest Movie<DAY1:FUN!>

ーー時の流れは早いもので、あの10周年記念ライブからもうすぐ1年が経とうとしています。

南條愛乃(以下、南條):たしかに! 私自身もついこの間の出来事に感じるくらい、余韻が長続きするライブでした。

ーー2日間のステージで、延べ50曲を披露しましたね。

南條:当初は持ち歌すべて歌いきることも目指したのですが、さすがに無理で(笑)。今回披露できなかった曲は、開演前と終演後の会場BGMにしたり、“FUN!”の日のバンドインストに組み込んだりと、色々な努力はしてみたつもりです。活動初期はカバー曲を歌ってなんとかライブ1本を成立させていたのに、もう2日間あっても収まらないなんて。この10年間、アルバム制作を頑張ってきたんだなと、改めてしみじみしちゃいましたね。

ーー今回のライブでは初日を“FUN!”、2日目を“Memories”と、コンセプトを区切る形となりました。

南條:最初は、アップテンポな曲とバラードで区切ることも考えたのですが、ファンのみんなが両日とも来れるわけじゃないと気づいて、どちらもバランスよく混ざったセットリストを作り上げていったんです。“FUN!”の日は、みんなと歌っていて楽しかった曲。“Memories”の日は、そこからさらに思い出深い曲という基準で振り分けていきました。実は当初、2017年の5周年ライブと同じく単日開催だと思っていて。2日間あると聞いてから、なるべく多くの曲を届けたいという気持ちにシフトしていったんです。

ーーたしかに「一切は物語」などが“FUN!”の方で演奏されたのは意外でした。

南條:ほかにも、各ブロックで曲の雰囲気を固めて、映像を使ったりメドレー形式にしたりと、歌う側も気持ちをすっと切り替えられるように意識しましたね。自分でもライブ後に気づいて驚いたのですが、それぞれの日でブロックが鏡合わせのように相対している部分があって。たとえば8曲目。初日に「君のとなり わたしの場所」でねこちゃんの曲を歌っていたところが、翌日は「7月25日」(※南條の実家で暮らしていた愛犬が亡くなった翌日(火葬の日)のことを歌った楽曲)でわんちゃんの曲になっているんです。

ーーたしかに! これほど綺麗に収まるものなのですね。そういえば、初日は「逢えなくても」をきっかけに、会場の空気も少し変わったなと。

南條:“FUN!”の方にもピアノ曲を入れたかったんです。今回は10周年記念ライブだったので、2018年までピアノを弾いてくださった森藤晶司さんをお呼びして、当時の音をそのままに届けたいなと。というより、私がまた森藤さんと「カタルモア」を歌いたかったので(笑)。

ーーそういった理由が。結果、現任の佐々木聡作さんとのピアノ2枚体制が構築されたと。

南條:私自身は、曲ごとに演奏担当をおひとりだけ立てるのかなと思っていたのですが、ライブ監督から「10周年記念だし、ふたりにずっと弾いてもらったら?」と、大盤振る舞いな一言が飛び出てきて。気づけばそーさん(佐々木)と森藤さんの方で、次々にパートの振り分けが始められていたし、なんならリハーサル中も片方が間違えるとふたりのイチャイチャが始まるんです(笑)。で、その光景に“なんだこれ?”と言いたげな顔をするドラムの八木(一美)さん。見ていて本当に面白すぎました。

ーー(笑)。キーボードが2枚になって、音が普段よりリッチになりましたよね。

南條:いつも同期で鳴らす音が生演奏になったし、おふたりともシンセサイザー使いなものの、弾き方にそれぞれのカラーが出ていますよね。森藤さんは一音ごとが細かくて、アドリブがたくさん入る感じ。そーさんは、原曲を教科書のようにした綺麗な弾き方。おふたりの音が重なることで、歌っていて楽しかったし、どこか懐かしさも感じられました。

ーーリハーサル時、バンドメンバーとの思い出話にも華が咲いたのでは?

南條:それもありました。なにより今回は、八木さんが「この2日間を、愛のある幸せな空間にしよう」「“ここに居られてよかった”と思ってもらえるライブにするんだ!」と、私以上に意気込んでくださって。スタッフさんも巻き込む形で盛り上げてくれて、改めて愛情深いバンドだなと感じられました。八木さんのドラムも久しぶりだったのですが、それはそうと八木さんはベースのキタムラ(ユウタ)さんと仲よしなので、そこもまた楽しそうで。

ーーまた新たなカップリングが。

南條:もう、イチャイチャだらけ(笑)! そんな彼らを横目に、ギターの星野(威)さんが一人、自分のパートを寡黙に練習していて。そんなバランス感も込みで、すごく私たちらしいなと思えました。

ーーちなみに、バンドメンバーの裏話などは?

南條:「ジャーニーズ・トランク」でピースをしていたのは、八木さんの提案。私のアイデアではないです(笑)。リハーサルのときに「ここはもう叩かなくていいかな!?」って笑顔でピースする姿を見て、「やりたいようにやんなよ(笑)」って流しちゃいました。

「It'll be dawn soon.」は、私にとっての“女神曲”なんですよ

LIVE Blu-ray「南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories-」Digest Movie<DAY2:Memories>

ーーここからはセットリストについてさらに詳しく聞かせてください。まずは“FUN!”の序盤、メドレーで歌唱した「わガまま♡ブれいん」「ゼリーな女」「idc」は、いわゆる“大人女子曲”で並べたのでしょうか。

南條:というより、KOTOKOさん作詞曲の括りですね。今回はダンサーのMaiMaiちゃんとAkanekoちゃんと一緒に、振り付けありで歌ってみました。そんな機会もなかなかないし、思えばリリース当時のライブでも息が続いていなかったなと。

ーー「idc」では、間奏前の〈Bad girl? idc!!〉をアレンジするのが定番の流れです。今回は「祝10周年+1!」でしたが、特典映像のメイキングによると、本番直前のタイミングまでなにを言うか決めていないのだとか。

南條:いつも歌い始めてから、“あ、やっべ。まだ決めてねえわ”って思い出していたり、いなかったり……。

ーー本番直前どころではなかった(笑)。ちなみに「idc」は5周年ライブでも披露されましたが……そのときはどんなアレンジをしたか、覚えていますか?

南條:たぶんだけど、「祝5周年!」。

ーーまさかの即答。しかも正解です(笑)。

南條:あはははっ(笑)。やっぱり節目のタイミングなんで!

ーー続く“Memories”の方では、やはりこの話題。「It'll be dawn soon.」が、リリースから約6年半の時を経て待望の初パフォーマンスに。

南條:これはもう、私のなかでも課題曲ですね。レコーディング当時は上手く歌えず、息も続かずで、なんとか曲として形にできたくらいで。だから、ライブでなんて歌える気がまったくせず。ファンのみんなにそのまま“ずっこけ曲”として届いてしまうのも嫌だったし、そんな気持ちを乗り越えて歌える自信も持てなかったんです。そんな心残りを成仏させるなら、もう今回しかないなと。

ーー実際に歌ってみての感想は?

南條:あの頃に比べれば、しっかりと歌えるようになりました。でも、理想にはまだ程遠くて。というか、この曲は私にとっての“女神曲”なんですよ。

ーー女神曲?

南條:私にとっての課題曲でもあり、女神曲。この曲は、未来が拓けていく夜明けをテーマにしていて。悩みや迷いを抱えているところに、陽が昇って光が差していくんです。もう私も40歳を迎えたわけですけれど、小娘が歌うには表現力も、説得力もまだ足りていないんですよね。

ーー言い換えれば、それだけ伸び代があるのではないでしょうか。

南條:そうだといいな。節目ごとに自分の力量を試す曲になりそうです。なんか、身体測定で“身長、伸びてるかな”って確認するみたいな(笑)。

ーーとなると、今後の披露機会もあると。

南條:もちろんです。まだまだ熟成させたい気持ちもありつつ、あまり箱入り曲にしてももったいないですから!

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