ジョルジャ・スミス、涙を誘うソウルからフロアを踊り狂わすアンセムまで 大充実の初単独来日公演

ジョルジャ・スミス、初来日単独公演レポ

 2018年の『SUMMER SONIC』以来6年ぶり、そして待望の初単独来日となったジョルジャ・スミスの東京公演が10月23日に豊洲PITで開催された。前日に行われた大阪・なんばHatchでのライブへの前評判を聞き期待をさらに高めつつ会場にたどり着くと、すでに大勢のファンが長蛇の列をなしていた。おそらくジョルジャと同世代、もしくはさらに若いであろう女性ファンはもちろん、男性客や海外のオーディエンスなど年齢層もさまざまに入り混じり、デビュー時からさらに拡大した彼女の人気を感じさせた。

 開演時刻とほぼ同時にバンド隊もセット。今回は彼女と長年ライブを共にし『falling or flying (Reimagined)』でアレンジとプロデュースを手掛けた日本人キーボーディストのアマネ・スガナミをはじめ、コーラス隊3人を含めた8人体制の大所帯での構成だ。「Are you falling? or flying?」新作アルバム『Falling or Flying』にちなんだダイアログのイントロを終えると、Ezra Collectiveの作品にも参加しているパーカッショニストのリッチー・スウィートとJ.J.ウォレスのドラムによる力強いトライバルなリズムがスタート。荘厳なビートとともに黄色いドレスを身にまとった主役ジョルジャが登場し、会場には割れんばかりの歓声が鳴り響いた。

ジョルジャ・スミス(撮影=Kazumichi Kokei)

 オープニングナンバーは新作アルバムの先行シングルとなった「Try Me」。「多くの意見を持つ世界に、自分をさらけ出すこと」を歌った同曲のメッセージに乗せて、デビュー時から大人のアーティストへと成長した彼女の意思の強さを早速見せつけると、そのまま息をつく間も無く出世作の「Blue Lights」〜2021年のEP『Be Right Back』から「Addicted」へとなだれ込む。リリック通りの突き刺すような青い照明〜EPのジャケットを想起させる赤い照明に会場が包まれ、ステージ中央に佇みながら楽曲を大切に紡ぐ彼女の世界へと一気に引き込まれていった。

 アルバム『falling or flying』の肝にもなっているアフロビーツ調の「Feelings」ではJ・ハスのパートをコーラス隊の男性ボーカリストが担当し、その豊潤な歌声に会場も沸く。ジャマイカルーツの父親を持ち人口7万人のウォルソールで育った彼女らしいレイドバックした雰囲気でレゲエビートの「Greatest Gift」へと続くと、オーディエンスも自然と横に揺れ踊っていた。恋愛感情や友情〜揺れ動く自己と他者の間の人間関係など、ともすればシリアスになりすぎるリリックでも、ジョルジャの歌声は温かく聴く者の身体に流れ込んでいくようで心地がいい。

ジョルジャ・スミス(撮影=Kazumichi Kokei)

 序盤は会場の音響バランスのせいかジョルジャの声が小さく感じられたが、しばらくすると本人の喉の調子も出てきてバンドに負けないくらいの伸びやかな声量を発揮。不健康な関係に別れを告げる「Broken Is The Man」〜最新作のテーマ曲ともいえる「falling or flying」〜ポップロック調の「GO GO GO」などのボーカリゼーションからは、彼女が敬愛するエイミー・ワインハウス、シャーデーやアデルらの影響を窺わせ、脈々と流れる英国ソウルの血統も感じることができた。ライブ開始時は激しく黄色い声を上げていたオーディエンスも、中盤になると集中して聴き入るように彼女の世界へと没入。とりわけ、ほぼ鍵盤のみのアコースティックアレンジが施された「February 3rd」と「Don't Watch Me Cry」の歌が素晴らしく、筆者の近くでは涙している女性の姿も見えた。

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